連載「変化と進化を先読みする~メディアの未来」は、デジタル化とスマート化が加速する中、メディアおよびメディアビジネスはどう変化しようとしているのかリポートします。

 連載第13回は、HTML5がメディアビジネスにどんなインパクトをもたらそうとしているのかを探ります。

 実は、「HTML5」を題材とするのにはややためらいもあります。少しでもインターネットの技術に関心のある読者にとっては、HTML5の話題はもはや食傷気味かもしれません。検索をしてみれば、技術を論じた難しい論考からIT業界内の勢力競争の話題まで、実に多くの情報に出合います。

 一方、HTML5は良くも悪くも技術的な概念です。技術から遠い人にとっては、煩わしいだけの話題ともなりかねません。

 そんな中で、あえてこの題材を取り上げるのは、本稿の対象と意識する、メディアやマーケティングについてビジネス的に携わる方々にとって、いよいよHTML5が“リアル”な概念になってきたからです。ことにメディアの企画や開発の重要な要素へと顕在化してきたのです。

 というわけで、多面的かつ広範な可能性を秘めたHTML5を、本稿ではメディアビジネスとの関わりにおいて、整理していくことにします。

Point HTML5とともにメディアはどう変わっていくのか?

 HTML5は、すでにメディアの“リアル”になりつつはありますが、まずHTML5とは何かという基本は理解しておくべきでしょう。

1. HTML5の概要とポイントを理解する

 HTML5は、よく知られているインターネット上のリンク付き文書(ドキュメントファイル)作成言語であるHTMLの最新仕様です(正式な最終勧告にはまだ至っていませんが)。

 本稿で扱う“HTML5”は、このHTMLの最新仕様に加え、それと関係の深いプログラミング言語「JavaScript」や、デザイン表現を高度化する仕様「CSS」などが組み合わさって実現する、高度で可能性に富んだインターネット標準全体を対象とします。

● 書籍:スキル向上のためのHTML5テクニカルレビュー Web標準の進化系(リックテレコム刊)

 「技術者による技術者のための」ではないHTML5解説書を望むなら、この1冊です。技術標準策定にも携わるような人々による共同執筆ですが、ビジネス分野の読者にも分かりやすく、かつ参照資料としても使えます。

● 連載:なぜ今、HTML5なのか――モバイルビジネスに与えるインパクトを読み解く(ITmedia プロモバ)

 通信系シンクタンクに所属する論者による多面的な視点からのHTML5入門が、この一連の論考です。メディアに関連する論点も含んでおり、現在進行形の話題を吸収できます。