東日本大震災の発生から1年半が経過した。今も日本人の多くが日本経済の再生は震災復興から始まるという思いを共有している。

 日本人として、大震災直後に日本人が見せた底力、思いやり、モラルの高さなどを誇りに感じなかった人はいないはずだ。だからこそ大震災の悲劇の克服が起爆剤となって、バブル崩壊以来20年以上続く日本の停滞に終止符が打てるのではないかと期待した。あるいは、終止符を打たなければならないと決意したはずだった。

大震災からの復興の力になっている若者たち

 しかし、あれから1年半が経過した現在、当時の期待や決意と現実の間には大きなギャップが生じている。震災・津波等自然災害への対応力の向上、農業・漁業・製造業・サービス業等の再興と活性化、全国各地にバラバラになっている被災地住民のコミュニティーの再結集などを早期に実現する必要がある。

 そのためには、東北の被災地を単純に元の姿に戻すのではなく、より安全で生産性や経済効率の高い地域社会を新たに構築することを目指すべきである。そしてそれを日本再生のモデルにしていこう。この1年半、こうした掛け声が何度も繰り返されてきた。

 しかし、現実には様々な障害もあって期待通りには進んでいない。それどころかがれき処理の問題にすら他の自治体から十分な協力が得られないという状況である。大震災直後に日本人が世界から称賛された思いやりと助け合いの心、高いモラルはどこへ行ってしまったのだろうか。そんな悔しい思いを感じている人は多いはずだ。

 その一方で、今も毎日復興を目指して歯を食いしばって努力を続けている人たちもたくさんいる。そうした震災復興を目指す人々の思いを支えているのは心の絆である。その絆の支えには多くの若者が貢献している。今も続いている地元や全国からの多くの若者たちを含むボランティアの方々による被災地に対する心のこもった支援はその典型である。

ロンドン五輪日本代表、史上最多のメダル獲得で震災復興を後押し

フェンシングのフルーレ団体で銀メダルを獲得した千田健太(写真向かって右端)選手は、故郷の宮城県気仙沼市でチームメイトの太田雄貴選手らとともに凱旋パレードを行った〔AFPBB News

 そうした支援を続ける人々の力を借りて、東北の地元の人々は心に深い傷を負いながらも一日も早く復興することを目指して努力を続けている。それでも時々心が折れそうになる時もあると思う。そんな時に心を奮い立たせてもう一度前に向かわせたのも若者たちである。

 今春の高校野球の選手宣誓、東北出身のオリンピックのメダリストたちの凱旋報告など、地元出身の若者たちが東北地方全体、そして日本全体に感動を与え、心を励ましてきていることも復興を目指す心の絆の大きな支えとなっている。

 東日本大震災からの復興への取り組みの中で、そうした若者たちの力強さが日本を国難の克服に向かって奮い立たせるエネルギー源になっていることに改めて気付かされた。