大阪市の橋下徹市長が率いる大阪維新の会が国政進出を決め、9月12日に「日本維新の会」の結党宣言をした。今のところ民主党やみんなの党などから7人の国会議員が合流を決めているが、橋下氏は「350人の候補を擁立して衆議院の過半数を取る」とバブル的な目標を掲げている。果たして彼らは、「日本維新」を実現できるのだろうか。

「勝てるから出る」という本末転倒

 まず分からないのは、なぜ地域政党だった大阪維新の会が国政に出るのかということだ。

 橋下氏は「大阪都構想を実現するためには法律の改正が必要で、国政に出ないとできない」と言うが、そういう広域行政を可能にする「大都市地域特別区設置法」が先の国会で成立した。地方行政のために国政に出るというのは本末転倒だ。

 本当の理由は「勝てそうだから」ということだろう。世論調査の「第一党」は、民主党にも自民党にも不満な無党派層であり、これを引きつける「第三極」ができれば、一挙に成長する可能性もある。週刊誌などの世論調査では、いま総選挙をやったら維新の会は比例区では第一党だ。

 維新の会の人気が高いのは、橋下氏が大阪府知事として実績を上げたからだろう。「強権的だ」という批判もあるが、大阪府の財政を再建して赤字から脱却した功績は大きい。橋下氏の特徴は、抽象的な理念をあまり語らない代わり、細かい問題まで介入して徹底した経費削減を求めてきたことだ。

 もう1つの橋下氏の手法の特徴は、敵をつくって徹底的に叩くことだ。特に労働組合が君が代を歌わないことに懲戒処分まで出して、職務命令を徹底させた。これについては人権侵害だという批判も強いが、橋下氏は「選挙のときは労使一体で私を落とすために選挙運動した。敵陣に乗り込んだのだから、命令しかこっちの武器はない」という。

 このように抵抗勢力を叩くことで人気を得る手法は、小泉純一郎元首相が2005年の郵政選挙で郵政民営化に反対した候補に「刺客」を送り込んだのに似ているが、今回は難しい。大阪なら怠け者の組合という分かりやすい敵がいるが、霞が関は敵としては大きすぎるからだ。