メキシコは歴史ミステリーの宝庫である。

 青銅器や鉄器などの金属器を持たないテオティワカンの人々は、紀元前2世紀、世界で3番目に大きいピラミッドを建設し、宗教祭事を決めるための天文学と数学の高度な知識を操っていた。

メキシコシティ
北東約50キロ地点にある
テオティワカン遺跡

 古代マヤ人の影響を受けたメキシコの先住民であるアステカ人のカレンダーには、宇宙が今までたどってきた4つの時代を示して、現在は5番目の時代だと記されている。

 マヤ文明は「時間の文明」という意味だが、今でも多くの謎に包まれている。

 エジプト、メソポタミア、インド、中国で古代文明が発生したが、それらの大文明が誕生した地域は大河が傍にあった。さらに、物を効率的に運搬する車輪の発明、そして銅や鉄などの金属の使用という3つの要素がある。しかし、マヤ文明には、これらの要素が1つも当てはまらない。

 インド人が発見したと言われている「ゼロの概念」をマヤの人々は、当時、独自に見つけており、高度に数学を発展させた二十進法を用いていた。また、表現能力は驚くべき高いレベルにあり、現在の実用漢字の総数6000字をはるかに超える4万種のマヤ文字を操っていた。

 マヤ文明の暦には、ハアブ暦とツォルキン暦の2つがある。

テオティワカン(メキシコ)のピラミッド

 ハアブ暦は1年を365.2420日と定めている。これは太陽年、つまり、太陽が黄道上の分点(春分・秋分)と至点(夏至・冬至)から出て再び各点に戻ってくるまでの周期365.2424日とほぼ同じである。

 ツォルキン暦は、260日を1周期とする。ハアブ暦の1年(365日)とツォルキン暦の1周期(260日)は、52年でその組み合わせが一巡する、これをカレンダーラウンドという。

 メキシコのチチェン・イッツァのピラミッドは巨大なカレンダーとなっており、ハアブ暦とツォルキン暦が一巡する52年のカレンダーラウンドの周期を正確に示している。

マヤの王たちは宇宙人?

チチェン・イッツァ(メキシコ)のピラミッド

 グアテマラのジャングルの密林には、天高くそびえるピラミッド群がランドマークのティカル遺跡がある。紀元前6世紀から人々がこの地に住みはじめ、紀元8世紀に最盛期を迎えたという。遺跡の中心である4号神殿の高さは70メートル。これは世界で3番目に大きいテオティワカンのピラミッドよりも高い。

 グアテマラは、アグア火山をはじめ多くの火山が活発に活動している。そのため、幾多の地震により、過去に何度か首都が崩壊し、その度に遷された歴史をもつ。そのような経緯からグアテマラに高い建築物は見られない。21世紀の現代になっても、7世紀に築かれた4号神殿はグアテマラで最も高い建築物である。