ロシア版のシリコンバレーが近いうちに誕生する予定だ。
ロシア経済は資源の輸出に過剰に依存している。資源輸出以外にロシア経済を成長させる起爆剤として、ハイテク、IT、ナノ技術などの発展に大きな期待がかけられている。
そこで政府の強力な支援のもと、モスクワ郊外のスコルコヴォという場所に「イノベーションセンター」(イノシティー)という科学技術の一大研究開発拠点・産業集積地が設立されようとしているのだ。
5月13日、連邦会議はセンターの設立に向けて土地譲与の法律を可決し、センターの運営機関の設置に関する手続きを完了した。運営機関の体制は5月末までに固まりそうである。
ロシアの「近代化」を外国の投資家にアピール
政府がセンターの設立を急いでいる理由は明確だ。6月17~19日に、ペテルブルクで「国際経済フォーラム」が開催される。その開会式で、メドベージェフ大統領は基調報告をする予定である。
報告では次の2つのポイントが強調される。(1)この2年でロシアは抜本的に変わった、(2)ロシアはイノベーションで将来を切り開く、ことだ。
フォーラムでは、大統領直属の「近代化・技術発展諮問委員会」の会議も行われる。諮問委員会は「イノベーションセンター」の仕事をバックアップするための組織であり、ロシア代表のほかに外国の有力なメンバーも入っている。
経済担当補佐官は、「大統領はこのフォーラムで、外国の投資家向けの魅力的な提案を用意している」と言う。どのような提案かは公開されていないが、おそらく投資環境の改善、投資保証の充実、納税免除などだと思われる。
イノベーションセンターを巡る活発的な動きの背景には、フォーラムに参加する外国の投資家にアピールしたいという狙いがある。
大統領自身も認めているように、外国の協力なしにロシアの近代化、とりわけイノベーションの実現は難しい。
ロシア政府は国内企業にイノベーション手当を約束したり、イノベーティブな企業に優遇措置をつけようとしている。だが、一番期待をかけているのは、外資である。
大統領府のスルコーフ副長官は、「外資を招くには、国内市場を最大限に開放することが重要だ。そのためには外交路線を修正することも必要になるだろう」と発言している。