タイのマクロ経済が持ち直してきた。

バンコクを代表する寺院、ワットポー(著者撮影)

 国家経済社会開発庁(NESDB)の発表(5月21日)によれば、2012年第1四半期の実質GDP成長率(前年同期比)は0.3%。季節調整済み前期比では11.0%となり、マクロ経済は洪水前の状況まで急速に回復した。

 結果、2012年通年の景気見通しは、2月時点の5.5~6.5%成長のまま据え置かれた。

 金融当局は賢明な舵取りを続けている。6月13日、タイ中央銀行(BOT)は、金融政策委員会において政策金利(翌日物レポ金利)を年3%で据え置くと決定。据え置きは5月上旬の前回会合に続き3回連続となった。

 BOTは、昨年後半の洪水被害を受けて国内景気失速を避けるために昨年11月、今年1月と2回続けて各0.25%の利下げを実施してきたが、今回の据え置きの理由を「タイ経済の確実な回復や欧州債務危機などのリスク要因を考慮した」としている。

ミクロでの回復シナリオと新産業創造という政策課題

 さて、ミクロ経済はどうか。タイでビジネスを行っている経営者やビジネスマンは、それぞれの業界で、その回復シナリオを描き始めているはずだ。

 そして、中長期的な政策の観点からは、引き続き、持続的な経済成長を支える新たな産業創造やベンチャー企業のインキュベーションが重要な課題となっている。

 従来、タイの中小企業政策の中でビジネスインキュベーションは重要な柱となっている。実施機関は、1999年4月設立の中小企業開発研究所(ISMED)である。

 同研究所は、欧州連合(EU)の資金及び技術支援を得て工業省産業振興局により設立された国内初のインキュベーションセンター(2002年より新起業家創出プロジェクトを遂行)を母体としたものである。

 しかし、タイにおいてもベンチャー企業の資金調達は決して容易ではない。デットとエクイティを含めファイナンス環境の改善は大きな論点となっている。

タイのベンチャー企業にとって厳しい資金調達環境

 企業が調達する主な外部資金として、(1)直接金融(株式、社債、コマーシャルペーパー等)、(2)間接金融(借入金)、(3)企業間信用(商業信用、延べ払い)、(4)ファイナンスリース、(5)ファクタリングが考えられる。

 まず第1に、タイでは商業銀行の金融仲介が十分機能していないため、ベンチャー企業は、成長を加速するために銀行借入を十分活用できていない。企業間信用、ファイナンスリース、ファクタリングといった選択肢も十分に活用できる状況ではないようだ。