先日、筆者が参加している異業種交流会で、ビジネス面から見たクラウドのメリットについて話をさせていただく機会があった。

 その会の参加者は、団塊世代の少し下ぐらいが中心で、一般企業であればそれなりの役職者。ビジネスの知見はあるが、いざITのカタカナの世界になると、若干二の足を踏んでしまうという方々である。

 ところが講演後、参加者の中から次々と「次期システムの検討をしていて、やはりクラウドも土俵に乗っている」という話が伝わってきた。

 そうした話を聞いて、クラウドコンピューティングの普及やユーザーのメリットの理解に関しては一定のところまで来ている、という実感を得ることができた。

 しかし一方で、その会にいたシステム開発会社の方からは、必ずしもクラウドを歓迎しているわけではなく複雑な心境であるという意見も出た。ひとことで言うと「クラウドは儲からない」というのだ。

クラウドは開発工数が少なくビジネスの継続性がない

 これは、その会社に限ったことではない。確かに多くのシステム開発会社が、「これからはクラウドの領域で・・・」と口では言いつつも、現実はその潮流の中でどう収益を上げていけばよいのか分からず、迷っているのは事実である。

 実際に筆者の会社が提携しているいくつかのシステム開発会社でも、「クラウドをやっているということにしたいが、自分たちで携わると収支が合わない」ということで、100%を自社で手掛けているケースは少ない。

 システム開発会社にとって、クラウドはなぜ儲からないのか?

 一般的な回答としては、「開発の工数が少なく、一つひとつの仕事が小さいから」「今までのサーバー型のシステムほどの保守運用が必要ないので継続性がないから」ということがよく聞かれる。そうやって仕事が小粒になっていくにつれ、原価が上がり、利益を圧迫するという構造だ。

 確かにそれは言える。ただ、目端の利く会社であれば、その小粒な話を突破口として、周辺システムの連携にビジネスチャンスを見出すなど、工夫をして凌いでいる。よって必ずしも案件の規模が決定的な要因だとは言えない。

 実は、もっと根本的な問題があると筆者は感じている。それは、より経営戦略に近い部分での話である。