今年、ロシア軍にある「新兵器」が配備された。「新兵器」の通称はリェターユシィ・フラム、すなわち「空飛ぶ教会」の意である。

 これはロシアの空挺軍(パラーシュート部隊)向けに開発されたもので、教会として必要な設備が1つのコンテナに収められている(上部にはロシア正教の小さなタマネギ屋根もちゃんと付いている)。

兵士たちと一緒に降下する「空飛ぶ教会」

地上に降り立った「空飛ぶ教会」(ロシア国防省より)

 コンテナは輸送機から兵士たちと一緒にパラシュートで空中投下でき、降下した地域でロシア正教の礼拝を行なえる。

 これまでにもロシア軍は様々な奇想天外な兵器を開発してきたが、この「空飛ぶ教会」も相当の代物であろう。

 ちなみに「空飛ぶ教会」が存在するからには、「空飛ぶ従軍司祭」もいなければならないが、こちらの方もリャザンにある空挺軍アカデミーで養成されており、パラシュート降下資格を持った司祭がすでに従軍している。

 このような現象は、何も空挺軍に限ったことではない。陸軍にも従軍司祭はいるし、空軍や海軍では新型機の引渡し式典や軍艦の進水式にも必ず黒服の司祭が姿を見せる。

 だが、このような光景が一般的になったのは、ごく最近のことだ。

 宗教が否定されていたソ連時代には、もちろん従軍司祭など存在しなかった。軍人たちにイデオロギー教育を行なったり生活面の相談相手になっていたのは、政治将校である。

 政治将校と言うと西側では「共産党の犬」で、兵士たちを脅して突撃させたり無茶な命令を出したりする悪役というイメージが強い。

 しかし、彼らが共産党から派遣されてきたお目付け役であったことは確かだとしても、このイメージはあまり公平なものとは言えなさそうだ。