3月4日の大統領選挙はウラジーミル・プーチン首相の勝利に終わった。ロシアに関わる多くの金融関係者にとっては期待通りの結果であり、選挙直後は「不安材料出尽くし」を材料に株式市場の急伸が期待された。
前回2008年大統領選挙時には、ドミトリー・メドベージェフ大統領の就任式が行われた5月にRTS指数は史上最高値を更新している。しかし、今回の状況はさほど単純ではないようである。
年初来、順調に上昇基調にあったロシア株式市場は選挙後に上値が重い、むしろ弱含む傾向にある。欧米そして我が国の株式市場が足元、欧州危機回避の目途を手掛かりに高値を追う傾向にあるのとは対照的である。
この背景はいかに?
ここで多くの読者が思い出すのは、昨年12月のロシア下院選挙をきっかけにモスクワで起きた一連の反プーチン市民運動だろう。
圧倒的な国民の支持を得たかつてのプーチン政権とは異なり、新プーチン政権の基盤は脆弱でやがて「アラブの春」と同様、政権崩壊につながるリスクが高いのではないか?
日本のニュース報道や解説を見ていると、そうした疑念が生じるのも無理はない。
しかし、集まった群衆が手にしているのは「火炎瓶などとは程遠い、最新型のアイフォーン(iPhone)、反対の手には破格の(高い)値段で売られているスターバックスコーヒー」(Prosperity Capital)である。
アイフォーンもスターバックスコーヒーもロシアでの価格は日本の2倍近い。「足元の失業率は6.5%でさらに改善傾向にあり、ジニ係数で見た所得格差は米国よりも小さい」状況で「ロシア版アラブの春」は起こり得ないとロシアの市場関係者たちは分析している。
筆者も同感である。現在モスクワに住むロシア人の多くはプーチン政権倒壊によって得るものよりも失うものが多いような気がする。
他方、多くのロシア市場関係者が指摘するのは、ロシアを取り巻く「外部環境」である。