過去1年余り、世界の中東に対する関心はチュニジア、エジプトで始まったアラブ騒乱とイラン核開発問題に終始している。そんな中、先週末アラブ首脳会議が30年ぶりにバグダッドで開催されたのだが、果たしてイラクは「復活」できたのか。
今回のテーマは今や誰も語らなくなったイラクの現状である。
寂しいアラブ首脳会議
残念ながら、バグダッド・アラブ首脳会議の主催国イラクに関する報道は驚くほど少なかった。
ヌーリー・マーリキー首相にとっては戦後の治安改善やアラブ世界への復帰をアピールする絶好の機会だったが、「シリアが欠席し、国家元首出席も10人にとどまるなど盛り上がりに欠けた」との報道が最も実態に近いようだ。
マーリキー政権がこの首脳会議開催に投入したエネルギーは並大抵でなかったろう。現在もバグダッドの治安は最善でも「不安定」であり、運が悪ければ「最悪」となる。
こうした状況は大きく変わっていない。このような危険な首都でアラブ首脳会議を開くためには物的、人的に膨大な資源が費やされたはずだ。
主催国だったにもかかわらず、今回の首脳会議でイラクは主導権を握ることができなかったらしい。主要議題であるシリア問題について、イランに近いイラクは介入に消極的だと言われ、強硬派のチュニジアやリビアとの対立が深まったこともあり、アラブ連盟全体のコンセンサス作りに失敗したからだ。
イラクと言えば世界有数の産油国であり、シュメール時代の昔からメソポタミアは世界の文明をリードしてきた。そのイラクに一体何が起きたのか。
サッダーム・フセイン政権が打倒され民主化が進んだはずなのに、なぜイラクは今も低迷しているのか。以下その理由を様々な観点から検証していきたい。