3月4日、第11期全国政協第5回会議に出席した中国軍事科学学会常務理事兼副秘書長の羅援少将が、海上の衝突に対処するため「国家沿岸警備隊」の創設を提言した。

 中国は南シナ海ではフィリピン、ベトナムと対立し、東シナ海では韓国、日本との摩擦が顕著になっている。中国周辺海域における中国の強硬な姿勢と活動の拡大によって、周辺諸国の懸念が高まっている状況に鑑み、羅援少将の発言には注目せざるを得ない。

「沿岸警備隊」は「準軍隊的」性質を持つ

 この発言の布石とも言える報道がその1カ月前にあった。2012年2月6日付の「日本経済新聞」(「中国海洋局と海軍、権益確保へ連携」)によれば、中国近海での巡視活動などを担う「中国国家海洋局」の劉賜貴局長は「中国海軍」の呉勝利司令官と会談し、海洋権益の確保へ連携を強めることで一致したという。

 もともと中国国家海洋局は中国海軍との関係が深い。1964年の国家海洋局設立に深く関わっていたのが鄧小平党総書記(当時)と、国務院副総理であった聶栄臻元帥であり、聶栄臻元帥が鄧小平に、海軍による国家海洋局の代理管理を提案した経緯がある。

 国家海洋局は65年に、青島に北海分局、寧波に東海分局、広州に南海分局を設置した。この分局の配置は、中国海軍の北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊という部隊配置と対応しており、まさに同じなのである。

 羅援少将の発言を報じた「南方都市報」によれば、羅援少将の言う「国家沿岸警備隊」は「準軍隊的」性質を持つものであるという。

 現在、中国の領海において警備、調査、監視に当たっているのは以下の海事機関であり、かなりバラバラな印象があることは事実だ。

・公安部辺防管理局所属の「海警」
・国土資源部国家海洋局所属の「海監」
・交通運輸部海事局ならびに港監局所属の「海巡」「海救」
・農業部漁政漁港監督局所属の「漁政」、など

 羅援少将の発言は、これらの海事機関を整理統合しようとするものである。沿岸警備隊を創設することによって、組織ならびに指揮系統を簡素化し、効率を高めるべきだと主張しているが、海軍が関与する国家海洋局が中心となり、準軍事組織として再編しようという意欲が見て取れる。

実は「沿岸警備」への関与が少ない国家海洋局

 しかし、これも一種の行政改革であると捉えた場合、やはり問題となるのは既得権益の調整であろう。ポストが減ることに対する組織の抵抗は大きいからである。