BRICsの中でもひときわ人口の多い中国とインド。世界からの注目度は同じように高いものの、こと消費に関しては圧倒的に中国の方がこの世の春を謳歌しているように見える。

 中国では消費が旺盛なニュースが目立つのに、インドでは消費絡みのニュースはそれほどお目にかかれない。この差はいったいどこから来るのだろうか。中国とインドでは情報を発信する日本人の数が圧倒的に異なるということもあるかもしれない。

年収以上の高い買い物ができる理由

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 しかし、中国に居を構えながら最近はしばしばインド各地に足を運んでいる筆者の目には、社会環境の差が両国の消費格差を生んでいるように見える。

 インドを訪れるたびに、できるだけ現地の普通の消費者層の人々と交流するようにしているのだが、中国人に比べインド人は総じて財布の紐が固い。中国とインドの個々の消費の底力の違いをひしひしと感じさせられている。

 世界の工場から世界の消費基地へ。「中国が成長したから次はインドだ」と短絡的に考えるのは危険ではないだろうか。

 日本人が市場チェックのために新興国に行くとまず「月収にも相当するほど高価なスマートフォンやノートパソコンをなぜ皆が持っているのだろう」と驚かされる。

 新興国では地元の平均的な人が平均的な暮らしをしようとも、日用品が100円ショップの商品より高くてクオリティが低い商品ばかりの中で、1人の給料ではまともに生活することもできない。

 夫婦共働きどころか、2世代、3世代の家族が一体となって生計を共にすることで、もともとすべての商品が高い中にあって、給料の数倍の支払いも厭わないのである。

 モノがあふれ欲しい商品がなくなった今の日本人にとっては想像しにくいが、戦後しばらくは日本人も同じだったはずだ。その当時を知らない30代半ばの筆者でも、サザエさんのような漫画を見てそれが分かる。家族みんなで欲しいモノを一つひとつ買い揃えていくのである。

 さて、中国が飛び抜けて消費がすごいのは国の経済規模の拡大だけが理由ではない。