「ロシア空軍がその気になれば、20分以内に日本を地球から消滅させることもできる」

 これは、中国の『環球時報』が2月15日付で報じたロシアの軍事専門家の発言として、ネットのニュースで流されたものだ。

 この発言の伏線とも言えるロシアの行動として思いつくのは、2月8日、ロシア空軍の戦闘機や爆撃機、空中給油機、さらに早期警戒管制機(AWACS)など少なくとも5機が日本の領空に接近し、航空自衛隊の戦闘機がスクランブルをかけ、追尾した事実である。

 しかし、近年では最大規模とも言えるロシアのこの「挑発飛行」に対し、まともに記事で取り上げたのは、筆者が見たかぎり産経新聞だけであった。

 まさか日本のマスコミにまともに取り上げられなかったことにロシアが腹を立てたとも思えないが、引っかかるのはこの日本を恫喝する発言が、中国共産党機関紙『人民日報』系列の大衆紙である『環球時報』の記事として出てきたことである。

 一応原文に当たってみると、ロシアの報道を引用する形で仕立てられた記事のようだ。ロシアの軍事専門家とは退役少将であり、ロシア軍部の対日観の一端がうかがえ、興味深い。

 だが、中国はこの日露間の出来事になぜ関心を持ち、記事にしたのか。

ロシアの経済発展に日本の協力は欠かせない

 米ソ冷戦時代、ソ連空軍機による日本領空への接近は日常茶飯事だった。時には領空侵犯事件さえ起きた。しかし、米ソ冷戦が終わり、ソ連が崩壊しロシアとなり、ソ連の軍事的脅威は過去のものとして日本人の意識から遠ざかっていたことは否定できない。

 では、このロシアからの恫喝的発言を受けて、わが国はあらためてロシアの軍事的脅威を認識すべきなのだろうか。