先週2月14日から19日までイスラエルのエフード・バラク副首相兼国防相が訪日し、15日に野田佳彦首相と会談を行った。

イラン核開発は「マンハッタン計画以上」、イスラエル国防相

イスラエルのエフード・バラク副首相兼国防相〔AFPBB News

 「バラク副首相、イランへ武力攻撃示唆」といった悲観論から、「対イラン攻撃、結論はまだ」「手遅れになる前に経済制裁を」などの現実論まで、ニュースの見出しは大きく割れた。

 筆者は天の邪鬼だからこの種の報道にはあまり関心がない。むしろ今回注目したのは、日本・イスラエル外交関係樹立60周年で訪日したバラク副首相が広島原爆資料館を訪問したというニュースだった。今、なぜヒロシマなのか。

 さらに調べてみたら、2年前の2010年2月にパレスチナとイランの指導者も広島、長崎を訪問していたことが分かった。彼らの一連のヒロシマ、ナガサキ訪問は単なる偶然か、その目的はいったい何だったのか。これが今回のテーマである。

三者の三様の発言

 まずは事実関係を整理しておこう。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長が広島市を訪れたのは2010年2月7日、原爆慰霊碑に花を手向け、原爆資料館を見学した。同議長は、「我々が訴えるのは世界が平和であるべき、安定であること。核兵器、大量破壊兵器がないことが重要」などとアラビア語で記帳したという。

 さらに、同議長は「パレスチナ国民も戦争に苦しめられてきた。戦争がもたらすものは人類と文明の破壊である。世界各国は大量破壊兵器の核兵器を廃絶すべきだ」と述べた。筆者の知る限り、パレスチナの現役閣僚級以上の広島訪問は初めてだ。

イランのラリジャニ新国会議長、IAEAへの協力見直しを示唆

イランのアリ・ラリジャニ国会議長〔AFPBB News

 イランのラリジャニ国会議長が長崎市を訪れたのは20日後の2010年2月27日、原爆中心碑に献花し原爆資料館を見学した。同議長は「原爆資料館はアメリカの非人道的な犯罪を永遠に伝えるものだ」として米国の原爆投下を厳しく批判する一方、「イランは核を保有しない」とも語ったという。

 報道によれば、その後帰国した同議長は2月28日にイラン国会で演説し、第2次大戦中のナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)になぞらえ「原爆投下こそが米国が引き起こした真のホロコーストだ」と述べたそうだ。

 さらにラリジャニ議長は、「(米国は)広島に原爆を投下して核兵器の影響の大きさを知りながら、長崎にも落とした」などと米国を批判し、「ホロコーストよりも、米国の核兵器使用を問題にすべきだ」と指摘したという。