先週、今週とモスクワでは厳寒(マローズ)が続いている。

 朝晩はマイナス20度まで冷え込む中、恒例のロシア・フォーラムが1月31日~2月4日の5日間にわたって開催された。

ゆうちょ銀行と野村証券が合併したような金融機関

マローズの夜のクレムリン

 この投資フォーラムは従来、国内大手投資銀行トロイカ・ディアログが主催してきた。しかし、同社がリーマン・ショック後に経営に支障をきたしたために、国内最大手商業銀行のズベルバンクが事実上の救済合併をした。

 合併作業が完了した今年のフォーラムは、名目上は両社の共同開催という立場を取っているものの、実態はズベルバンク・フォーラムの色彩がきわめて濃いイベントとなった。

 各セッションの冒頭には、ズベルバンクとトロイカの合併効果をアピールするプロモーションビデオが流されていた。

 「国内ナンバーワン銀行 ズベルバンク + 国内ナンバーワン投資銀行 トロイカ・ディアログ、 “1+1 = 11” それが我々の目標!」

パネリストとして発言するクドリン前財務大臣

 “1+1>2” というのはよく聞く話だが、“1+1=11”というのは、多くの優れた数学者を輩出したロシアらしくない、しかし何ともロシア的(=大ボラ話)で苦笑してしまった。

 日本の多くの読者にはこれらの金融機関はなじみがないためイメージが湧かないかと思うが、分かりやすく日本で例えれば、ゆうちょ銀行と野村証券が合併するようなものである。

 ズベルバンクはソ連時代の国営貯蓄銀行、その起源は帝政時代にさかのぼる(1841年設立)。現在、従業員25万人、ロシア全国に2万支店、口座数は7000万、ロシア人の2人に1人はズベルバンクに口座を有していることになる。

 同行は典型的な国営企業であったが、ウラジーミル・プーチン政権で経済発展大臣を務めたゲルマン・グレフが2007年に頭取に就任、リベラル派のグレフはズベルバンクの経営にトヨタ自動車のカンバン方式を取り入れる(どのように取り入れられたのかは定かではない)など改革を進めた。