世界は急速に高学歴化している。先進国だけでなく開発途上国でも、多くの人が大学で学ぶようになった。

 この変化を理解するためには、まず60年ほど戻って1950年頃の世界を見てみる必要がある。

 1950年の世界の人口は25億人だった。先進国に8億人、それ以外の地域に17億人が住んでいた。日本ではその頃に学制改革が行われて、中学までが義務教育になった。当時の日本は、西欧以外では教育が普及した国であったが、それでも大学に進む人は少なかった。

 1950年に世界の何人が大学を出ていたか正確に知ることは難しいが、先進国に住む人の1割以下と考えても大きな間違いにはならないだろう。そうすると、世界で大学を出た人の数は8000万人以下になる。世界人口の3%以下だ。

 70年代になってもその割合が大きく増えることはなかった。世界の人口は40億人になったが、先進国に住む人は10億人でしかなく、人口の多くが途上国で増えたためである。

 先進国では、大学教育を受ける人の割合が大きく増加したが、それでも、大学を出た人は先進国人口の2割程度だっただろう。先進国でも、現在の高齢者の多くは初等教育や中等教育を受けただけだった。

 そう考えると、当時、大卒は世界人口の5%でしかない。つまり、この時代までは大学を出た人は世界のエリートであった。

急増した大学卒業者を受け入れた製造業

 大学を出た人は高度な知識を必要とされる職業に就く。高級官僚、医者、弁護士、大学教授などである。しかし、どこの国でもそれらの職に就く人の数は限られている。

 それでは50年代以降、先進国で急速に増えた大学の卒業者はどこに就職したのであろうか。

 それが製造業だった。戦前において自動車や家庭電化製品は、ごく限られたエリートの持ち物だった。しかし戦後になると、先進国では自動車や家庭電化製品は急速に一般家庭に普及していった。また、途上国でも富裕層がそれを欲しがった。

 その需要を満たすために、先進国の製造業が繁栄した。世界の人が欲しがったから、いくら作っても足りない。その結果、製造業は多くの人を雇用し、高い給料を払うことができた。そして先進国で大学を卒業した者は、繁栄する製造業の管理職として雇用された。