最後の最後になり、北朝鮮金正日総書記死去という大ニュースに接することになった2011年は、望む望まないにかかわらず、世界中で、秩序、安定、そして既成概念といったものがもろくも崩れ去った1年となった。
ますますICON化されるスティーブ・ジョブズ
そんな1年を代表する「今年の顔」は誰なのか、と考えてみる時、権威失墜した多くの独裁者や既得権者など、既に社会の表舞台から消え去ってしまった顔、歴史となりつつある顔しか思いつかないことに気づく。
今年随一のベストセラー書籍が、発売されて間もないウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ」であることが、その象徴かもしれない。
「独裁者」との誹りを受けることも少なくなかったIT界のカリスマはこの世を去り、その姿はますますICON化されつつある。
ポップカルチャー界を見回してみても、映画界では日米とも興行成績上位を占めるのは「ハリー・ポッター」「トランスフォーマー」「パイレーツ・オブ・カリビアン」といったキャラクターが既に固定したシリーズものばかりだった。
音楽界も英米では「アデル」という歌唱力抜群のニュースターが活躍を見せたものの、万人受けするには(身体は大きいのだが)インパクトに欠け、日本ではAKB48やK-POPのアイドルたちのようなファン以外には顔の区別もつかないような者ばかりで、「顔」と言えるような存在はどこにも見当たらない。
今年の真の主役、SNS
そんな2011年、社会を揺さぶった真の主人公は、実は、無数の人々を結びつけるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)という集合体だったと言えるのではないだろうか。
その代表的存在、フェイスブックの誕生を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』(2010)が、1月、日本で劇場公開された時、そんな存在となることを予測できる者などいるはずもなかった。
ところが、ちょうどその頃チュニジアで始まった大規模デモを皮切りに、世界各地で繰り返された反政府、反格差デモでSNSは大きな役割を果たしていくことになるのである。一連の変革が「革命2.0」と呼ばれる所以である。
大衆の不満の火は今も世界中で燃えつきることなく、12月になり選挙での不正が露見したロシアでも発火。ここでもSNSは大きな役割を果たした。