政府は12月20日、「社会保障と税の一体改革」についての関係閣僚会合を開き、「改革素案」を決めた。
年金支給額を3年かけて2.5%引き下げ、本来の水準に戻す方針を打ち出した以外は、低所得者の基礎年金を加算し、年金の受給資格期間を現行の25年から10年に短縮するなど、年金の支給額を増やす政策ばかりだ。
子ども手当あらため「子どものための手当」の拡充を打ち出す一方、年金の支給開始年齢の引き上げや外来患者の医療費窓口負担に100円を上乗せする「受診時定額負担」など、国民の負担増につながる対策は先送りだ。これによって毎年1兆円以上増えている社会保障の「自然増」がさらに膨らむ。
「増税の前にやることがある」というけれど・・・
ところが野党は、これに対して「公約違反だ」などという手続き論で批判するばかりで、本質的な問題を指摘しない。
それは増税しても財政は再建できないということだ。「一体改革」はバラマキ福祉と一体で消費税を5%増税するだけなので、50兆円近い歳入欠陥はほとんど縮まらない。
これに対して民主党内では、小沢一郎氏に近い議員から「増税する前にやるべきことがある」という反対論がある。「不景気のとき増税したら税収がかえって減る」という批判もある。
では、彼らはその対案として何をすべきだというのだろうか。
「徹底的に無駄を省かないと国民の理解は得られない」と言う人がいる。おっしゃる通りだが、先ごろの政策仕分けでも周波数オークションの実施が提言されたのに総務省はそれを拒否し、1兆円以上の増収を棒に振った。
これまでに行われた事業仕分けでも経費節減効果は数千億円で、1000兆円を超える政府債務には焼け石に水である。