米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を2010年5月末までに「決着」させることはほとんど不可能な状況になった。

 鳩山政権がどうあがいても、残り1カ月半では地元合意を得て政府案をまとめられないし、日米合意も無理だろう。米大統領・オバマに「5月末決着」を公約した首相・鳩山由紀夫は責任を問われ、退陣は避けられない。しかしその場合でも民主党幹事長・小沢一郎は平然と居座り、今夏の参院選の陣頭指揮を執ろうとするのではないか。「ポスト鳩山」を筆者は副総理兼財務相の菅直人と読む。政権の「たらい回し」がまた始まるのか、それとも・・・。(敬称略)

 「鳩山首相退陣へ」――。メディア各社がいつこの見出しで勝負を懸けるか。鳩山がいつ退陣の決意を固めるか。これから長い取材合戦が始まるが、筆者は今回のコラムでそれに先んじて参院選前の「鳩山退陣」を予測することにした。

 もちろん、政界の一寸先は闇であり、「絶対」はない。ひょっとしたら、鳩山が持っているという「腹案」によって普天間問題が水面下の日米交渉で一気に決着し、沖縄など地元が大喜びし、下落していた内閣支持率も反転して急上昇・・・。という鳩山にとって夢のような話もゼロではない。1%の可能性はあるかもしれない。だが、99%はあり得ない。

鳩山に冷淡なオバマ、非公式会談は夕食会で10分だけ

核安保サミット、コミュニケ採択し閉幕 核管理体制の強化など

ワシントンで開かれた核安全保障サミット〔AFPBB News

 2010年4月12日夜(日本時間13日午前)、ワシントンで開かれた核安全保障サミットの夕食会。鳩山はその席上、オバマと非公式に会談した。正式会談は見送られ、夕食会で隣りの席を用意したのが、オバマのせめてもの鳩山に対する配慮だった。

 だが、その会談時間はわずか10分。そのうち5分間はイランの核開発疑惑に割かれたという。鳩山は「じっくりと2人だけで話ができた」と語ったが、どこが「じっくり」なのか。現段階で鳩山と公式会談するメリットは何もないと、米側が極めて冷淡な対応を示しただけではないか。

 会談後、鳩山は記者団に普天間問題について「5月末までに決着する」とオバマに伝えたことを明かしたが、「具体的な地名は私から一切出していない」と述べた。

 4月9日、駐日米大使・ルースは外相・岡田克也との会談で「地元の同意」がない日本政府の新たな移設案を話し合うのは時期尚早として、日米の実務者協議を延期するよう求めていた。地元の了解を得られない案を議論しても意味がないというのが、米側の判断なのだ。

 つまり、「地元の同意を取り付けてから、政府案を持ってこい」と言っているのである。鳩山が「腹案」を持っていたとしても、オバマに話せるような状況ではなかったのだ。