米株価が方向感を失っている。金融危機発生以降、乱高下にはもはや誰も驚かないものの、全米経済研究所(NBER)の「景気後退宣言」でセオリー通り急落したかと思えば、34年ぶりの雇用激減には急反発するなど、全く読めない相場展開が続く。それに付き合うウォール街は疲労の色を濃くし、株価本格反転に向けて「あく抜け」をもたらす一大イベントを渇望している。「ビッグ3が破綻すれば・・・」という穏やかならぬプレゼントを、クリスマスに欲しがる市場関係者も現れ始めた。

 「大き過ぎて潰せない」。どこかで聞いたセリフだが、金融機関の話ではない。米資本主義の象徴とも言えるビッグ3の窮状が、レームダック(死に体)のブッシュ政権と連邦議会に重くのし掛かっている。

 なにしろ、米独立調査機関の自動車研究センターが試算した最悪シナリオ(ビッグ3の完全操業停止)では、短期的に300万人の失業者が生まれるという。今年9~11月の3カ月間で過去最大の125万人超が失職した国に、そんなハードランディングを受け入れる余裕はない。

 11月中旬、ビッグ3首脳は政府の金融支援を求めて議会公聴会に臨んだが、「社有ジェット機で乗り込み、助けてくれとは何事だ」「『合衆国銀行』から融資がほしいなら、収益見通しを示せ」と批判の集中砲火を浴び、ほうほうの体でデトロイトに舞い戻った。

 それでも、オバマ次期大統領が「米製造業の屋台骨」という太鼓判を押したため、3社はめげない。議会の要求を呑み、12月2日に再建計画を提出。翌々日には、各社首脳陣が自社製ハイブリッド車で陸路9時間をかけて再び首都に乗り込み、2回目の議会証言に立った。

潰してみろ!デトロイトの「脅迫状」

 ビッグ3の主張にはぶれがない。金融危機に伴う市場の混乱に加え、景気後退と原油高に伴う新車販売不振、つまり「外的要因」こそが経営危機の引き金だと居直り続ける。デトロイトの辞書には、「自己責任」という単語がすっぽり抜け落ちている。

ビッグスリー救済めぐる米上院公聴会再開

救済を懇願するGMのワゴナーCEO 〔AFPBB News

 「われわれは過ちを犯した」。公聴会冒頭、ゼネラル・モーターズ(GM)のワゴナー会長兼最高経営責任者(CEO)は経営努力の不足を謝罪してみせた。その一方で、「GMが破綻すれば米経済に壊滅的な打撃を与える」という常套句を盛り込み、再建計画という名の “脅迫状” を差し出した。要するに、「ウチが倒産すれば大変なことになるぞ。助けるしかないだろ」の一点張りなのだ。

 ビッグ3のロビイ活動や全米自動車労組(UAW)の投票行動など、政界裏側の魑魅魍魎が3社の延命に寄与してきた。しかしこのご時世に、総額340億ドル(約3兆2000億円)の税金投入となれば話は別。「破綻させた方がコスト安」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)などメディアの論調は厳しく、米国民の約6割が支援に反対する。

 「業界水準に届かぬ品質や見栄えのしないデザインの商品を供給し、しばしば米国の消費者を失望させてきた」。そもそも、GMが雑誌に掲載した全面広告で認めたように、業績不振の元凶は「売れるクルマづくりの放棄」にほかならない。

 世界最大シェアの上にあぐらをかき、経営陣と労組は莫大な収益を巨額報酬と手厚い福利厚生という形で山分けしてきた。これに対し、トヨタ自動車やホンダなど外国メーカーはコスト管理を徹底して、シェアを急拡大した。GMの殿様商売はもはや通用しない。

 工場労働者の実質時間給を比べると、ビッグ3の75ドルに対し、米国外メーカーは45ドル以下。虚弱体質の米国勢は環境対策などで技術開発投資が遅れ、販売不振は自業自得だ。金融危機はデトロイト崩壊の引き金に過ぎず、常識では税金による救済は考えられない。