「ギョーザ事件の犯人は政府が政治的意図を持ってでっち上げたんじゃないの?」
「中国も法治国家になってきた。やらせなんてできるわけがない、後で大問題になる」
「じゃあ、なぜこのタイミングに突然公表したんだ? 中国側から途中経過の報道が一切なかった。日本側としては不信感を抱かざるを得ない」
「公安はかなり前から捕まった容疑者に見当をつけ、捜査を続けていた。日本側が高度に事件を重視していたから、慎重に慎重を期し、確実だと判断してから公表したんだ」
「覚せい剤を運んだ日本人が死刑になったというニュースがほぼ同時期に公表された。何らかの関連性があるのか?」
「・・・・・」
日中で大きく異なるジャーナリストのスタンス
桜満開の東京。日本と中国のジャーナリストが12時間、とことんやり合った。
非公開・クローズのため、本音で語り合えるのが「日中ジャーナリスト交流会議」の良いところだ(日本側主催:日中ジャーナリスト会議実行委員会 座長:田原総一朗氏;中国側主催:中華人民共和国国務院新聞弁公室 座長:劉北憲氏―中国新聞社社長)。
今回で5回目になる。筆者は議事録・報告書作成担当として参加させてもらっている。昨年は四川省成都で開催された。運悪く雪に見舞われ、北京首都国際空港が麻痺に陥った。空港側からは天候に関する情報が開示されなかった。
日本人ジャーナリストたちは缶詰めになり、高度成長を遂げる中国の甘さと欠陥を垣間見た。会議は1日延期されたが、中国側から本場「火鍋」によるもてなしを受け、辛さとほろ酔いの中、すっかり上機嫌だった。
日中間ではジャーナリズムに対するスタンスが若干、いや、かなり異なる。容疑者が捕まり、一応解決したかに見える毒ギョーザ事件における「経過報道」がいい例だろう。
冷凍ギョーザ報道に総力取材の日本、独自報道なしの中国
2008年1月30日、千葉と兵庫の3家庭で10人が中国製の冷凍ギョーザを食用して中毒に罹ったことが明るみになった。筆者の個人的な統計によると、読売新聞ウェブ版では同日に5本、翌日6本、2月1日に20本、2日に12本、3日に13本、2月28日までに156本、5月15日までに180本の記事が配信された。
共同通信社では、事件発覚後、約50人の社会部記者・デスクによるチームが形成され、5人以上の記者が事件の現場となった河北省石家荘に派遣されたという。1分1秒を競う取材・報道が展開されたのだ。
一方の中国メディアであるが、基本的に政府当局の記者会見を垂れ流すだけで、独自取材・報道は見られなかった。