主要国の株式市場は2月に乱気流を抜け、新興国経済の好調に支えられる形で堅調に推移している。投資家にとって2010年の理想的な展開は、このまま新興国の成長が推進力となって、巡航速度でのグローバル経済の成長と資産価格の上昇がもたらされることである。しかし、少しずつではあるが、気を付けておかねばならない事象も見えてきた。

米国は住宅金融の問題解決が課題

 3月下旬から、米国長期金利の上昇傾向が目立っている。株式市場が調整局面を迎えた2月に3.53%まで低下した米国10年債利回りは、4月に入って一時、4%を付けるまで上昇してきている。

グリーンスパン前FRB議長、米金融危機は「100年に1度の津波」

「金利上昇は莫大な国の借金に対する国民の懸念を表している」 グリーンスパン前FRB議長〔AFPBB News

 金利上昇の背景にあるのは、米国の景気回復基調が鮮明になったことだ。しかし、グリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)前議長は「米連邦政府が積み上げた前代未聞の巨額債務に対する投資家の懸念が、金利上昇をもたらしている」と手厳しい。

 出口戦略に動きだしたFRBが予定通り3月末をもってMBS(住宅ローン担保債券)の買い取りを終了させたことで、債券需給が緩んだことも一因であろう。そして長期金利の上昇は、米国経済にとって悩ましい課題が残っていることを、改めて想起させる。

 深手を負った米国経済がここまで回復することができたのは、FRBが国債やGSE債の買い取りによって、長期金利を低位に安定させてきたことの功績が大きい。

7月の米住宅販売、微増するも予想割れ

FRBによる「人為的低金利政策」が住宅需要を下支えしてきた〔AFPBB News

 FRBは2008年11月にGSE債とMBS合わせて6000億ドルの買い取りを発表、2009年3月にはMBSの買い取り枠を1兆2500億ドルまで拡大させた。

 その結果、2008年11月当時6.5%程度だった30年固定住宅ローン金利は、その後、ほぼ5%を中心とする低位に安定している。この「人為的低金利政策」が住宅需要を下支えし、住宅市場や住宅価格の底打ちに寄与してきた。