「ドーハの悲劇」再び・・・。てっきりそうなるものだと身構えていただけに、思わぬ結論に正直拍子抜けした。クロマグロの禁輸問題である。カタールの首都ドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議は、日本にとって最大の焦点だった大西洋・地中海産クロマグロの禁輸案を否決し、幕を閉じた。
日本政府が土壇場で繰り広げた積極果敢なロビー活動の勝利とされる。国際舞台で発言力が高まってきた多くの途上国を説得し、欧米を中心に禁輸案支持で固まりつつあった状況を最後の最後で引っくり返した現実を「功績」と称える向きもある。
しかし、「日本人の食文化を守れ」と言わんばかりに、脇目も振らず禁輸回避にひた走った日本政府関係者。気の毒だが、その必死さはいささか滑稽に見えた。
この会議の最中も、多くの人たちが回転寿司店で「格安の大トロ」をつまんでいたに違いない。庶民にとってお目にかかることさえ稀だったかつての高級魚も、今ではすっかり身近な存在になっている。
もちろん、高級店で出されるクロマグロと回転寿司のそれが全く同じであるはずがないが、レベルは違えどもれっきとしたクロマグロ。庶民もちょっとした贅沢気分で気軽に箸を伸ばす。そんな光景がいつの間にか当たり前になっている。
日本への割当量は4割減、一時的に漁全面停止の可能性も
その一方で、今年のワシントン条約締約国会議で議題となったようにクロマグロの資源量減少は動かしようのない事実である。
日米欧など関係国が参加する「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は2009年11月の年次会合で、2010年の地中海を含む東大西洋でのクロマグロ漁獲枠を1万3500トンに決めた。2万2000トンだった2009年に比べ38.6%もの減少。日本に割り当てられる量も1148トンと前年の1871トンから約4割削減されることになった。
先行きについても決して楽観できない。2011年以降の漁獲枠は、ICCAT科学委員会が今後、資源評価に基づき決める。万が一、資源状況の悪化が確認された場合は、クロマグロ漁を一時的に全面停止する措置を速やかに発動するという。