ロシアが従来のエネルギー・地下資源輸出に依存した経済構造を、「イノベーション」に立脚した経済構造に改めようとしていることは、以前、このコーナーでも述べた。 従来は絵に描いた餅、笛吹けど踊らずの感が強かったのだが、この1カ月あまりの間に、いくつかの具体的な動きが現れた。

ロシア版シリコンバレー構想とは

 まず2月の中旬にウラジスラフ・スルコフ大統領府副長官が、地元経済紙ヴェドモスチとのインタビューに答えている。 「人口3万~4万人の、世界中から最もイノベーティブな人々が集まる “イノベーション都市” を建設する」。これが、ロシア版「シリコンバレー」構想の始まりである。

スコルコボ
スコルコボ

 この構想によれば、ロシア版シリコンバレーは最先端の技術・製品を世界市場に供給、そして2015年までに1000億~2000億ルーブル(3000億~6000億円)の売り上げを実現することを目指している。

 そして次の焦点は、それが国内のどこに設立されるのかに移る。

 3月10日に、アルガジー・ドボルコビッチ大統領経済顧問は、「研究開発センター」 (ロシア版シリコンバレーの正式名称)の設立候補地として、トムスク、ノボシビルスク、サンクトペテルブルク、オブニンスク、ドゥブナといった旧ソ連時代からの科学技術都市に加え、モスクワ市西方の郊外に位置するスコルコボの名前を挙げた。

ビジネススクールの授業料は2年間で1000万円以上

 スコルコボは元はモスクワ郊外の高級別荘地だったのだが、2006年にロシア財界人を発起人として新しいビジネススクールが設立された。同スクールのアドバイザリーボードには、ドミトリー・メドベージェフ大統領をはじめロシア政府の閣僚クラスが多数、海外からもリー・クァン・ユー元シンガポール首相等、著名人が名を連ねている。

 ロシア政財界のバックアップを受け、ロシア国内では最もプレステージの高いビジネススクールとされ、欧米の有名教授陣の講義も多い。しかし、その学費も小耳にはさんだところでは2年間で9万ユーロ(約1120万円)とのことで、ロシアでは破格の水準である。

 そして18日にはメドベージェフ大統領が候補地を発表、果たしてそれはスコルコボであった。