去る11月12日、 ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は両院議員をクレムリンに集め、恒例の年次教書演説を行った(英語全文はこちら)。

概ね好意的に受け取られた大統領演説

視界は不良 それでも建設は続くモスクワシティ

 元々、米国大統領の年次教書演説とは異なり、その内容が世界の注目を集めることは少ない。

 ただ、今年は1時間40分にわたる報告のほとんどが内政、特に足元の経済危機への対応、今後のロシア経済の近代化について費やされたこともあり、日本での報道も限定的であったように思える。

 経済の近代化の文脈においてプーチン政権が設立した国営会社の見直しに言及されたこともあり、「プーチン政権への批判か?」と議論をあおる向きもあったようだ。

 しかし、実際のところ、報告は極めて平易かつ実務的であり、その内容の多くが9月にメドベージェフ大統領が発表していた論文「進め! ロシア」の焼き直しであったこともあり、議論の対象とはならなかったようである。

 また金融市場でも概ね肯定的(マーケットニュートラルという点においても)に受け取られたようである。

 従来のクレムノロジストから見れば、今年のメドベージェフ大統領の教書演説は分析のし甲斐のないつまらない報告なのだが、ビジネスの面からは注目に値する内容もないわけではない。それはロシアが目指す近代化の方向について言及した部分である。

 メドベージェフ大統領はロシアの近代化に必要な分野として5つのテーマ、(1)ヘルスケア(2)省エネルギー(3)原子力(4)宇宙・通信(5)ITを掲げた。それぞれのテーマについてやや詳しく見てみよう。