最近、行きつけの医者に「最近どうも体がだるくて、何をするにせよ億劫でしょうがない」って言ったら、あるホルモン薬を処方してくれた。その薬のおかげで、おれは77にして10代の時のような活力が甦ってしまい、まるで青春時代に戻ったみたいなんだ。

　体全体が若返ったようで、下の方は残念ながらいつものまんまなんだけど、肩こりなんかは嘘のように軽くなったから驚いたよ。

　体が元気になると気持ちも元気になるもので、なにしろ、普段は億劫に思えることも体が軽いからやる気満々で、50年ぶりにスキーに挑戦したくなるくらい、ここ何十年にない元気がみなぎってくるんだよ。世の中には、こういう薬があるんだよな。

世の中のすべては繋がっている

　健康というのはお金には代えられないものだけれど、それ以前に、自分がこの世に生まれてきたということ自体が、おれにとっては奇跡的なことだ。

　今、自分自身が存在しているのは、様々な繋がりによるものだ。言うまでもなく両親やその先の先祖がいるから、おれは今ここにいるわけだ。だから、お彼岸やお盆に先祖の墓参りをするということは、先祖を思う気持ちとともに、自分自身の存在を確認することでもあるんだな。

　顔も知らない農家の人が作ったお米を毎日食べて、南シナ海の水蒸気が、おれの住んでる向島に雨となって降るように、時間も空間も、世の中ってのはすべてが繋がっている。その繋がりが影響して、世の中のすべては成り立っているんだ。何の関連もない現象や個体というのはこの世には存在しない。

　人が存在しているのは、すべて因縁や由来がある。自分の目の前にいる人だって、様々な繋がりの中で必然的にそこに存在しているんだ。だから、目の前の人をおろそかにしない方がいい。

他人を妬んで人間関係を狭めることはない

　人間関係に恨みつらみはつきものだ。人間は誰でも、貪り、怒り、愚かさという煩悩を抱えているけど、人の「恨み」というのは厄介なもんで、こっちは忘れていても相手はそれを忘れなかったりで始末が悪い。