16日のNY市場、市場の欧州懸念は根強く、ユーロは終盤に売りが強まった。序盤は売りも一服し、1.34台前半まで下落していたユーロドルも1.35台半ばまで戻していたが、米経済指標が底堅い内容だったことや、ギリシャ、イタリアの新政権が正式に誕生したこと、そして、EU・IMF・ECBのトロイカ調査団がポルトガルへの80億ユーロの融資を正式に承認したこともフォローしていた。
しかし、ユーロの戻り売りもきつく、終盤になって米株と伴に見切売りが加速している。フィッチレーティングスが欧州債務問題が更に拡大すれば米銀への悪影響は避けられず、格付け見通しを脅かすと述べたことも悪材料視されたようだ。イタリアのモンティ新政権には政治家が一人も閣内に入っていないなど異常事態となっており、新政権への不安感も強い。
結局、ユーロドルは1.3550近辺で上値を止められ、1.34台半ばまで一気に下落している。また、ユーロ円や豪ドル円も失速した。
反応は無かったが、若干気掛かりだったのが、ユンケル・ユーログループ議長の発言。ドイツ紙とのインタビューで、ドイツの財政赤字水準はスペインのそれよりも高く懸念を持っている。市場はその事実をあえて黙視しているといった趣旨の発言を述べていた。確かにドイツの累積赤字の対GDP比率は83%程度でスペインの61%より高い。フランスも82%程度とドイツと同水準だが、ドイツ経済の安定感から考えれば、比較にはならないと市場は判断しているのだろう。ドイツが揺さぶられたら完全に崩壊する。
◆ドル円は膠着せざえるを得ず
一方、相対的なドル買いの中、ドル円は77.00水準を維持している。モデル系などファンド勢の多くは売りに回っているようだが、一方で介入警戒感は根強く下押しすることも出来ない。欧州債務問題への懸念が根強い中で、全体的にはドル買いとなっており、下値をサポート。しかし、円高でもあることから上値トライも厳しく、結局、膠着せざるを得ないといったところだろう。76.60付近に日本の機関投資家の買いも観測されている状況。一方で76.50より下にはストップが観測。
(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)