震災の影響で例年より遅くシーズンインした今年のプロ野球。その総決算、日本シリーズが秋深まる11月12日始まった。

 既に退任が決まっている落合博満監督率いる中日ドラゴンズと7度目の挑戦でようやくクライマックスシリーズを突破した福岡ソフトバンクホークスとの間で戦われるとあって、野球ファンの期待が高まっていたその朝、スポーツ紙を賑わしていたのは、前日夜唐突に記者会見を開いた読売ジャイアンツ(巨人軍)清武英利球団代表兼GM(ゼネラルマネジャー)の渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長批判の記事。

 巨人軍球団代表ともなれば、日本プロ野球界を牛耳る側の人間との認識を持つのが普通。それが、ヒエラルキーを無視した形で、球界のドンに宣戦布告したともなれば、世間が放っておくはずもなく、おかげで日本シリーズへの人々の関心は薄れてしまった。

「清武の乱」の日に公開された『マネーボール』

今年4月21日に神宮球場でのヤクルト中日戦。節電のためデイゲーム開催されたが、ギリギリまで照明灯はつかず、正直言って暗く見えづらかった

 ところで、清武代表のもう1つの肩書きである「GM」というものは、日本ではあまり馴染みがなく、いま一つピンとこないかもしれない。

 端的に言えばチームを作り上げることに権限を持つ者、ということになるのだが、日本では、球団によってその権限を持つ職種が微妙に食い違っており、複数にクロスオーバーしているケースも多いようである。

 しかし、米国プロスポーツ界では、オーナーから得た資金でチームを作り、日々の運営までのすべてに権限を持つ絶対的存在。

 この「清武の乱」が起きた同じ11月11日から全国で劇場公開が始まった『マネーボール』(2011)は、米国メジャーリーグ界に新風を吹き込んだオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMの物語である。

 米国では、社会同様、球団の経済格差もとてつもなく大きい。金満球団であるニューヨーク・ヤンキースの選手年俸総計は軽く2億ドルに達する一方、今年もプレイオフに進出するなど常勝球団になりつつあるタンパベイ・レイズは4000万ドルそこそこである。

 こうしたことは運営手法にも大きな違いをもたらすことになり、1990年代終わり、オーナーが代わり緊縮財政を取らざるを得なくなったオークランド・アスレチックスのGMに就任したビーンは、それを「セイバーメトリクス」と呼ばれる科学的統計に求めたのである。

 米国同様、日本でも球団財力には著しい差がある。金満球団の代表が巨人やソフトバンクなら、貧乏球団(失礼!)の典型は広島東洋カープ。