日本語の答弁に思わず頷く議員も
証言当日、豊田社長は議会ビルに入館後、混乱を避けるため、下院監督・政府改革委員会の控え室に匿われた。内部にはトイレもあるため、同社長は一切マスコミと接触することなく、稲葉良睍・米国トヨタ自動車社長と証言席に登場。激しいシャッター音が鳴り続ける中で宣誓を済ませると、ついに質疑応答に入った。
冒頭こそ、英語の声明を読み上げたが、その後は一貫して通訳に自分の言葉を委ねた。最初のタウンズ委員長とのやりとりでは、通訳のペースを豊田氏も委員長もつかめず、委員長が「イエスかノーで答えて」といら立つ場面もあった。
しかし、質疑を重ねるごとに、周到な準備を思い出したのか、豊田社長は次第に顔を上げ、議員が居並ぶひな壇を見上げる余裕が出てきた。日本語であっても、質問者の目をジッと見つめて答弁。言葉の意味が分からないのに、思わず頷いてしまう議員もいたほどだ。
アクセルペダルを手に公聴会で質問する共和党のバートン下院議員〔AFPBB News〕
だが、それで追及の手が緩むほど甘くはない。アクセルペダルの不具合に絡む死傷事故の責任を質されると「哀悼の念を表したい」と謝罪。過去のリコールで、実施規模の縮小によって1億ドル(約90億円)の経費節減ができたとする内部文書に非難が及ぶと「説明資料であり、経営方針を示すものではない」と釈明した。
今回のリコール問題の認知時期については、「社長として具体的に知ったのは2009年暮れぐらい」と述べ、翌月にリコールを決めた迅速さをアピール。欠陥が疑われている電子制御装置については、「現時点で問題はない」との主張を貫き、トヨタ車の安全性を訴えることも忘れなかった。
評価は二分、批判一辺倒からは緩和
トヨタの経営哲学の解説書『ザ・トヨタウェイ』を手に、厳しい質問をぶつけた民主党のカプター議員〔AFPBB News〕
中盤を過ぎると、議員らが休憩や所用でいったん議場を離れる姿が目立ってきた。そのたびに大勢の記者団が群がり、質問をぶつける。議員発言の一部をご紹介しよう。
◆ノートン議員(民主、ワシントンDC)
「心配なのはトヨタの『隠蔽文化』。欠陥も技術も隠している。米国で最も大切なのは透明性なのに、トヨタにはそれが感じられない」
◆マイカ議員(共和、フロリダ州)
「豊田氏の日本語と通訳の英語は微妙に異なっているようだ。内部文書の説明は納得できない」
◆カプター議員(民主、オハイオ州)
「自分たちの商品で多くの人を殺していることを隠してきた。トヨタはとても冷酷だ」


