8日のNY市場もイタリアの政局を巡って目まぐるしい展開となった。イタリア下院の予算関連法案可決と、ベルルスコーニ首相の辞意表明が、ユーロの大きなターニングポイントとなった。

予算関連法案可決までは、欧州株上昇やイタリア債の下げ一服で、ユーロは買いが先行していた。しかし、法案が可決されると、ユーロは売りが強まっている。野党の棄権もあり、法案は可決に至ったが、絶対過半数を獲得でなかったことで、政治的混迷を嫌気した売りが出たのかもしれない。しかし、後半になって首相が緊縮財政法案の可決を条件に辞意を表明したことから、一気にユーロの買戻しが強まっている。

狭い範囲ではあるが、ユーロドルは1.3760から1.3840近辺の間で上下動。また、この動きに、相対的なドル売りの状態ともなったことから、ドル円は介入後の安値を下回り、一時77.60近辺まで下落している。ただ、介入警戒感もある中、意識されるポイントの77.50水準は維持した。

なお、イタリア議会の法案可決後、イタリア国債の売りが強まり、利回りはきょうも上昇している。10年債は一時6.77%まで上昇し、財政運営上の危険水準である7%に接近。議会の動向もあったが、一部で欧州の決済機関LCHクリアネットがイタリア国債の証拠金率を引き上げるのではといった憶測も出ていた。しかし、LHC側はその噂を否定している。

◆中東情勢緊迫化の可能性も留意
イタリアに影を潜めてしまった感もあるが、IAEAがイランに関する報告書を提出し、国産の核兵器製造を指摘していた。米政府は公式には報告書を分析中としているが、米政府筋によると、米政府はイランへの制裁を強化する可能性が高いとしている。イスラエルの行動を含めて、再び中東情勢が緊迫化する可能性もあり、今後の動向は留意したい。

(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)