モスクワではこの数年、割合暖かな冬が続き気候の温暖化はいよいよロシア人のライフスタイルを変えてしまうのではないか?と考えていた私は、この冬の寒さに昔ながらのロシアを見た思いだ。

 ロシアで商売をするなら、この厳冬の時期を除いてほかにない、とは、旧ソ連時代の公団貿易の頃から言われていたことだ。遊び好きのロシア人が仕事にやむなく(!)まじめに取り組むのは、郊外に出かけるのが難しいこの時期だけ。

春を待ちきれずにバカンスに出かけるロシア人

サントリーは、物量作戦でMIDORI(メロンリキュール)を大々的にPR。オーストラリアから「MIDORI」ブランドアンバサダーのマニュエル・テロン氏(カウンター内)を招致し、MIDORIを使用したカクテルを来場者に大盤振る舞いした。これにかかった費用は、大企業ゆえに可能なのだろう

 春ともなると、5月1日、2日の旧ソ連時代のメーデー休みの延長である「春と労働の祝日」から9日の「対独戦勝記念日」までまるまる10日間休んで、郊外のダーチャへ、さらには海外へと出かけていく。

 私の周りには、5月の連休まで待ちきれずに、4月に休暇を1週間取得して、さらに5月の10日間と、ほぼ3週間職場に出てこない人までいる。

 そんなわけで、2月はロシアビジネス関係者にとって大変重要な時期であり、私の関係している飲料食品業界、化粧品業界でも、2つの大きな国際展示会が開かれた。

 まずは「PRODEXPO 2010」。昨年もこのサイトでお伝えしたが、これはロシア最大の食の展示会である。昨年は、商社や農林水産省の肝入りで、15社もの日本メーカーが参加した。

 ところが、今年はロシアの特約代理店と共同で出展したサントリー1社だけ。

 この現象、ロシアまで来るには来たが、その後の展開が拙稿「『初めに笑い最後に泣く』ロシア流通事情」にあるような経緯をたどったのであれば、業界の関係者として、大変申し訳ないと思うとともに、業界が一体となったロシア市場取り組みが必要だとの思いを新たにする。

お金のかかるロシアの展示会

PRODEXPO開催中の会場地下では、多くの雑貨屋台が軒を並べている。このあたりにロシアのバザール文化を感じることができる

 展示会、特にロシアのそれは参加に大変なお金がかかる。従って目的をしっかりと絞り込んで、それなりの事前準備を行い、商売上必要な人には招待状を出して、必ずブースに出かけてもらうような仕組みをする必要がある。

 展示会後のフォローも事前活動に劣らず重要である。こういう準備とフォローのない展示会出展は、それがどんなルートの働きかけであろうが、無駄な出費に終わることははっきりしている。

 イタリア貿易振興会の一員として参加していたワイナリーのブースに旧知の経営者を見つけた。私の会社でも彼のワインを日本に輸入していたので、ローマ郊外のワイナリーには観光を兼ねて何度か行ったことがある。

 昨年もPRODEXPOに参加していたので、その後の展開を尋ねると、彼はこんな話をしてくれた。

「昨年、モスクワの1社と代理店契約がまとまりそうになって、彼らから契約前にワイナリーを訪問したいという話になった。食事代はワイナリーで出そうと言ったところ、モスクワのレストラン関係者10人を含めて、総勢12人でワイナリーに来られて、大変な散財となった。 そして、彼らからはその後なんの連絡もなく、今回はこうしてブースで彼らが通りかかるのを捕まえようとしているところだ」