「観光立国」を目指す鳩山政権。少子高齢化が進む日本経済の救世主となるのか。JBpressは西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長に単独インタビューを行い、「プリンスホテル」などのブランドで日本最大の観光ホテルチェーンを展開する同社の戦略を聞いた。

 2010年10月の羽田空港の本格国際化や2025年の中央リニア新幹線開業に合わせ、後藤社長は4つのプリンスホテルが林立する東京の品川・高輪地区を「日本最大のコンベンション都市」に改造する計画を明らかにした。また、最大の標的を中国からの訪日客に定め、プリンスホテル全館で中国語テレビ放送の視聴実現を目指すなど「国際バリアフリー」対策を急ピッチで進めるという。(2010年2月17日取材、前田せいめい撮影)

 JBpress 日本が「観光立国」を目指す上で官民の課題は何か。

 後藤高志社長 リーマン・ショック以降の世界的な経済危機の影響とはいえ、2009年の訪日外国人数は678万9900人(前年比18.7%減)まで落ち込んだ。政府は「2010年1000万人」の目標を打ちだしているが、実現は相当厳しい。

西武ライオンズオーナー・後藤高志氏/前田せいめい撮影後藤 高志氏(ごとう・たかし)
1972年東大経卒、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行 みずほコーポレート銀行副頭取を経て2005年西武鉄道社長 06年西武ホールディングス社長 07年埼玉西武ライオンズオーナー兼務

 鳩山政権は前原誠司国土交通相を中心に観光立国を目指して本腰を入れ、「2019年2500万人」という非常に大きな旗も立てるなど、高く評価している。しかし担い手はあくまで民間であり、政府が民間の知恵と活力をいかに引き出すかが重要になる。

 ━━ 具体的にはどんな施策が必要なのか。

 後藤氏 まず、外国語の表示が至る所で遅れており、町や通りまで徹底していない。もう1つが、中国からの訪日客対策。2009年も中国からはわずかながら(=前年比0.6%増)プラス。しかし中国人全体で年間4500万人が海外へ出掛けているのに、隣国でありながら日本は100万人しか取り込めていない。

 その最大のネックが、(年収25万元=約330万円=以上を発給要件とする)訪日中国人の個人向け観光ビザ(査証)。中国側に不満が強く、リピーターとして何度も訪日する人にはビザ不要にするなど、発給要件を緩和してほしい。

 それによって、とりわけ若い世代の対日感情が改善する。一度来てもらえば、日本の「おもてなし」の心や豊かな歴史・文化に触れ、必ずファンになると思う。