前回は悪名高きネット検閲ソフト「グリーンダム」をご紹介した。中国側資料によれば、同ソフトを開発したのは河南省の一民間企業とされている。だが、その経緯を詳しく調べてみると、裏で人民解放軍が深く関与していたらしいことが分かってくる。
「グリーンダム」はポルノ撲滅用の民間ソフトなどではなく、中国のサイバー戦闘能力を総結集して作られた一種の兵器と見るべきだ。今回はこのソフトの出生の秘密を通じて、今や日常化しつつある米中「サイバー戦争」の実態を改めて明らかにしたい。
公開競争入札の怪
中国の工業・情報化部がネット上のポルノ等有害情報を制限するフィルタリングソフトの開発・導入を決定したのは2008年1月14日頃だったらしい。
1月24日には、同ソフトの「1年間使用権」を公開競争入札で調達すると公表されている。
4カ月後の5月20日、工業・情報化部は突如、「鄭州金恵計算機系統工程有限公司」と「北京大正語言知識処理科技有限公司」の2社を同ソフトの共同開発企業に決定する。調達費総額は4170万元(約6億円)であった。
この2社が選ばれた理由は今もって不明である。どちらも当時は無名に近い会社であり、大規模な受注実績などなかったからだ。
さらに調べていくと、どうやら両社とも中国人民解放軍や国家安全部などに近いことが明らかになってくる。
解放軍コネクション
例えば、グリーンダムの語彙分析を担当した「北京大正」は2005年に人民解放軍装甲兵工程学院の機密ソフト開発に協力したと報じられた。ソフトウエア開発を担当した「鄭州金恵」も長期にわたり解放軍情報工程大学の画像認識技術などを支援していたと言われる。
「鄭州金恵」の主任エンジニア李弼程氏は、河南省鄭州市の情報工程大学にも勤務し、解放軍の各種軍事技術を流用していたとされる。同社社長である趙彗琴女史もハルビンの軍事工程大学出身らしい。