「中国のユダヤ人」とも言われる温州商人を生んだ浙江省温州市などで経営破綻や経営者の失踪が続発している。・・・温州の商人は、豊かな財力や商才、旺盛な投資意欲がゆえに「中国のユダヤ人」とも称される。・・・温州市の民間融資の10~15%が年内に不良債権化する見通しという。・・・

中国の第2四半期GDP10.3%増、やや鈍化

中国経済にも陰りが見え始めている。写真は中国の建設現場〔AFPBB News

 以上は素人のブログではない。れっきとした全国メディア記事の一部だ。

 中国温州市の中小民営企業が最近の金融引き締めで銀行から資金を調達できなくなり、香港などに所有する不動産を叩き売っている、世界景気低迷と債務危機で輸出主導の「温州」発展モデルは危機に瀕しているという報道である。

 それにしても、日本ではいつから温州商人が「中国のユダヤ人」になったのか。そもそも、なぜ温州商人が「中国のユダヤ人」なのか。筆者には全く理解できない。本当のユダヤ人が聞いたら、恐らく憤慨するに違いない。

 今回の温州市を中心とした債務危機は起こるべくして起きた事件だ。むしろ、温州商人が「ユダヤ的」でなかったからこそ「夜逃げ」したのだ、とすら思う。今回は中国人のユダヤ人観を検証しながら、「温州」発展モデルが行き詰まった理由について考えてみたい。

誰が温州商人を「中国のユダヤ人」と呼ぶのか

 まず、イスラエル人は温州商人を「中国のユダヤ人」と決して呼ばない。「中国のユダヤ人」と言えば彼らは、第2次大戦前にハルピンや上海に居住した多数のユダヤ人とその子孫を想像するだろう。

 エフード・オルメルト前イスラエル首相の祖父がハルピンのユダヤ人墓地に埋葬されていることはあまり知られていない。

 また、米国人も「中国のユダヤ人」なる表現は決して使わない。中国の誰々は「ユダヤ人のようだ」などという「政治的に不適切な」差別用語を口走れば、その途端に社会的信用を失うからだ。

 実際に、英語のグーグルで「Jews of China」と入力しても、「温州商人」などとは出てこない。では誰がそんなことを言うのか。答えは簡単、「温州人以外の中国人」が彼らをそう呼ぶのである。