1月11日、中国の国営新華社通信は、中国がミサイル迎撃実験を実施して所期の目的を達成したと伝えた。
その実験は、ミッドコース段階(大気圏外を慣性飛行している状態)の弾道ミサイルを、陸上発射ミサイルで迎撃するというもので、中国としては初めての実施となる。なお、新華社通信は「この実験は防御的なものであり、いずれかの国に向けたものではない」と付け加えた。
これ以外に開示された情報は、外交部スポークスマンが、ミサイル破壊による「デブリ」(宇宙空間に飛散したゴミ)が今回の実験で発生していないことを明言しているだけである。迎撃に使用したミサイルや迎撃されたミサイル、実験の行われた場所などは、まったく明らかにされていない。
弾道ミサイルの飛行経路は、3段階に分けられる。発射から大気圏離脱までの「ブースト段階」、大気圏外での弾道飛行の「ミッドコース段階」、大気圏再突入から着弾までの「ターミナル段階」だ。
射程1000キロメートル以下の短距離ミサイルは大気圏内の飛行だから、この3段階は当てはまらない。今回は大気圏外のミッドコース段階での迎撃実験なので、破壊されたミサイルは少なくとも射程2000キロメートル以上の中距離弾道ミサイルということになる。
3年前にも事前予告なく衛星爆破実験
この実験で想起されるのは、中国が3年前の2007年1月12日に実施した衛星破壊実験だ。
この実験を最初に報じたのは米国の航空宇宙専門誌「エイビエイション・ウィーク」だった。同誌は、高度870キロメートルにあった古い気象観測衛星「風雲1C」がロケットで衝突破壊されたことを伝えた。
この報道を受けて、ようやく中国外交部スポークスマンが実験を明らかにしたのは23日のことであった。だが、使用ロケットなど具体的な情報提供は、現在に至るもまったくない。要するに謎だらけのままだ。
当時、中国は北京五輪を翌年に控えていた。その時期に、なぜ国際社会の反感と警戒を高める行動を取ったのか。特に、2006年末に通算で5回目になる「国防白書」を発表し、中国の軍事的脅威の否定に努めていた矢先の実験であり、「常識では考えられない国際社会への挑発的行動」と批判された。