地球温暖化問題への対応が急務となる中、世界で電気自動車(EV)への注目が集まっている。各国政府の技術開発や充電インフラへの支援、電池技術の進化などに支えられて、自動車は今後、長期的には電動化(EV化)の方向に進むと考えられる。

 世の中の論調は、EV化が進むと、これまでの自動車産業の強み(摺り合わせで製品の品質を作り込む)が発揮できなくなり、また、クルマ単体から社会システム全体のコーディネーションが必要となるため、海外メーカーや新興メーカー(ベンチャー企業や新興国メーカー)との競争で優位性を失うという見方が多い。

 今回は、別の視点でEV化時代における日本の自動車企業が持つ強みの発揮の仕方に焦点を当てて考察してみる。

1. これまでの利益成長

利益率向上から売り上げ向上に成長要因が変わった

 図1は、トヨタ自動車とホンダの合計を例に取って、過去20年間の利益の増減要因を分解したものである。

 2000年代初頭までは利益率向上による利益増、その後は売り上げ拡大による利益増によって利益総額を拡大してきたことが分かる。

 前半の利益率拡大の背景には、1990年代後半のプラットフォーム戦略による効率化とコスト削減が寄与したと見られる。

 つまり、この間、プラットフォームの大胆な統合により、フレキシブルで低コストなプラットフォームへの大規模投資が可能となり、それをベースとした商品の大量開発が可能となった。

 この結果、多様化し変化するグローバルな市場ニーズに合わせて、「早く」「多くの」「優れた」「低コストな」製品を投入することが可能となったと同時に、ようやく規模の経済性を生かせる体制が整った。

 続く2000年代前半以降の利益拡大期には、このような競争力の高いクルマを開発・市場投入できた成果として、世界中でそのような商品力の高いクルマへの需要が高まったことが背景にある。その需要に応えるための生産能力増強が必要となった。