「本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。

 引き続き「(その2)諸行無常」について話を進めます。このコラムでの「諸行無常」とは、実務担当者が直面する「あらゆる事象が時間と共に変化してしまう」ことを言います。ここでは、本流トヨタ方式でこれをどう捉え、どのように取り組んでいるかを説明しています。

 これまで諸行無常に関して、「<1>諸行無常と日本人」「<2>自分の城は自分で守れ」「<3>標準作業時間とは何か」「<4>2007年問題は解決したか」というテーマでお話ししてきました。今回は、「<5>企業は鍛えなければ衰え、変わらなければ滅びる」ということについてお話しします。

クルマは放置していると動かなくなる

 「諸行無常」の例として、放置するとダメになるモノをいくつか説明しましょう。

 石油ストーブを使っている方は、春になってストーブをしまう時、説明書に従ってクリーニングする(残った灯油を最後まで燃やし、芯を乾かした状態にする)と思います。灯油を残すと、それが酸化してガム状の物質を作り出し、芯を目詰まりさせて不完全燃焼を引き起こし、一酸化炭素中毒を起こしやすいからです。

 草刈り機やチェーンソーを使っている方は、しばらく使っていないとエンジンがなかなか始動せず困った経験があると思います。原因は、ガソリンの組成が変化してしまう場合が多いのです。

 専門的な話になりますが、ガソリンは、沸点が30~220度の範囲内の石油製品の混合体です。密閉の悪いタンクに入れておくと、沸点の低い方からガソリンがどんどん気化して逃げていきます。これが、エンジンのかからない原因となる場合が多いのです。

 そこで石油ストーブと同様に、しまう時にはガソリンを使い切り、次に使う時に新しいガソリンを入れて始動することが必要なのです。

 乗用車はどうでしょうか。燃料タンクは密閉されていますので、しばらく放置していてもガソリンが気化して始動不良になることはあまりありません。その代わり、エンジン内のガソリンの蒸気が油膜を洗ってしまい、エンジンが潤滑不良を起こすとか、盗難防止装置が稼働し続けてバッテリーが上がってしまうとか、長い間、タイヤの同じ所が地面に接しているため、その部分が凹んでしまうといったことが起きます。このようなことにならないように、定期的にある距離を走らせることが必要になります。