民主党幹事長・小沢一郎の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件は、「民主政権VS検察」全面対決という構図になった。小沢が東京地検特捜部に対して「断固戦う」という決意を示せば、首相・鳩山由紀夫も「どうぞ戦ってください」と全面支援を表明した。これで鳩山は小沢と一蓮托生になったと言わざるを得ない。
2009年1月18日、通常国会が召集された。波乱含みの与野党攻防が始まる。「政治とカネ」をめぐり、鳩山は防戦一方の展開となろう。小沢も説明責任を果たさなければ、ますます批判を浴びるのは必至。小沢独裁の崩壊、すなわち鳩山政権の「終わりの始まり」という予感がしてならない。(敬称略)
1月15日、小沢の資金管理団体「陸山会」による土地購入をめぐる事件で、東京地検特捜部は同会の事務担当だった衆院議員の石川知裕らを政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕した。13日の強制捜査着手に続き、政界は再び激震に見舞われた。
首相の軽過ぎる小沢激励、野党は「不穏当発言」
民主党大会当日の1月16日午前、小沢は首相公邸に入り、鳩山に自らの潔白を主張し、検察と全面対決する姿勢を示した。鳩山は「私も信じています。どうぞ戦ってください」と激励した。
この発言を記者団に紹介したのは、ほかならぬ鳩山自身である。検察を批判する小沢の言葉を全面的に信じて小沢を支援しようというのである。行政府の長が一方に肩入れし、検察批判に加担したと思われても仕方がない。首相自身も小沢と一緒になって検察と戦う腹積もりなのか。
「行政府の長としては不穏当な発言」と公明党代表の山口那津男が批判すれば、「指揮権発動まで覚悟しているのか。のっぴきならない話だ」とみんなの党代表の渡辺喜美もかみついた。
慌てた鳩山は17日、「幹事長として続投することを認めたという意味で言ったわけだから、不適切だとは思っていない」「検察を批判するとか、捜査に予断を与えるものでは一切ない」などと釈明した。
が、あまりにも鳩山の言葉は軽い。防衛相・北沢俊美が武器輸出三原則を見直すべきだと発言し、鳩山は「言葉が軽過ぎた」とたしなめたが、軽さでは鳩山の方が上である。
小沢を激励した首相自身の発言がどのような影響を与えるか何も考えないから、こういう事態を招く。国会では当然、野党の追及材料となる。「鳩山は小沢と本当に連帯責任を取るつもりなのか」「民主党政権として小沢を守る姿勢を鮮明にすれば、捜査に影響を与えることになると考えないのか」などと野党側から質されるに違いない。