プーチンがロシアの最高権力者に返り咲くことになった。望ましくない予測が的中してしまい、モスクワでは失望感が広がっている。

 こうなることは分かっていた、仕方がないと頭では受け入れられても、心では納得しがたいという人は多い。民主主義の茶番劇ではないか、我々は愚弄されているのか、と憤慨する人も少なくない。

 ある世論調査では、ロシアを去って外国へ移住したいという人の割合が増えている。30歳以下の若者は、12%が外国で暮らしたいと答えた。

 しかし、国民の間に表立った反対運動は見られない。プーチンが出馬を発表した直後、反対デモがモスクワ中心の広場で行われたが人数が少なく、「みすぼらしい集まりだった」とマスコミに伝えられた。もはや政治家を信用していないロシア国民は、二頭政権の入れ替わりにも関心を示していない。

 10月6日、2011年1~9月のロシアの財政収支は340億ドルの黒字だったと発表された。ここ何年かの石油と天然ガスの価格高騰のおかげで国民の生活水準は著しく向上した。ロシアで中近東みたいな大規模な反政府デモが繰り広げられる可能性はまずない。

 その上、改革論者だったメドベージェフ大統領が退場することで、政権はもっと安定するだろうとの評価も少なくない。

 しかし、プーチンの前に広がっているのは、決して平らな歩きやすい道ではない。安定的な政権とするために、2012年5月(大統領選挙)以降は常に「なぜ自分は再び大統領になったのか」、つまり、自らのレゾンデートル(存在理由)を明らかにしなければならない。

 ロシアが直面している内外の問題は、どれも長引き、解決されていない。新しい問題もどんどん出てくる。国民の痛みを伴う改革は避けられない。年金の受給年齢を60歳から65歳に引き上げる法案はその一例だ。こうした改革の支持をプーチン政権は得られるだろうか。

ますます遠のくロシアの「近代化」

 2000年頃から毎日テレビでプーチンの顔を見ているロシア人は、もはやプーチンの顔を見飽きている。2012年から少なくとも6年間大統領を務めることになれば、もっと飽き飽きするだろう。

 メドベージェフの側近である現代発展問題研究所のユルゲンス総長は、プーチン政権の「リスク」の1つとして、プーチンの顔を見続けることに対する国民の疲弊感を指摘している。