前回は、世界中で躍進を遂げているサトー独特の経営手法を取り上げました。3行127文字で毎日社員にアイデアを出させる仕組みなど、多くの企業に参考になると思います。そのサトーは、人材マネジメントにも独自の考えを取り入れています。今回はその独特の人材マネジメントを紹介しましょう。

人材の採用は玉石混交で

 人材の採用は、玉石混交、すなわち、出身校や経歴、能力などがあえて雑多になるように行われています。その理由は、次の2つです。

(1)能力の良い悪いは環境によって変化する

 ビジネス環境は常に変化しているため、現在のビジネス環境に100%適合する人であっても、環境が変化すれば、力を出せなくなる場合があります。逆に、環境変化によって、それまで活躍していなかった人が新たに能力を発揮できるようになる可能性もあります。従って、現在の環境に100%適合している人ばかりを採用しない方が変化に対応しやすいのです。

2できない人がいるから、できる人がいる

 働き蟻の実験では、「よく働く蟻」と「働かない蟻」の割合は20対80になります。「よく働く蟻」だけを集めて仕事をさせると、やはり「よく働く蟻」と「働かない蟻」の割合が20対80になります。逆に「働かない蟻」だけを集めて仕事をさせても、「よく働く蟻」20%と「働かない蟻」80%に分かれると言われます。

 人間の場合も同様で、例えばエリートばかりを集めても、20%はその通りの能力を発揮するだろうが、残りの80%は堕落してしまいます。能力は様々でも、全員の目が輝いている、そんな集団形成をサトーは目指しているのです。

部門間で対立したら、責任者を相互に入れ替える

 社内の各組織が自分たちにとって最適な活動を行おうとすると、それぞれの利害が衝突することがあります。例えば、ある部門は成長のために予算の増額を求め、別の部門は財政面から予算を抑えようとしたり、あるいは、ある部門はA製品の開発を優先し、別の部門はB製品の早期開発を主張したりする、といった具合です。

 こうした利害対立が生じた場合、相互に正論が主張されているのであれば、その時はより高次元の経営判断が必要になります。そのためには、それぞれの組織や個人が、対立する相手の立場や主張を会社経営に照らして考えることが求められるのです。

 小さな組織であれば、普段から顔を合わせている相手の言動をよく見て理解しようと努めておけば足りますが、大きな組織になると、相手の立場や見方がなかなか見えてこないため、自己主張が部門間の対立にまで発展してしまいがちです。