北朝鮮からタイ・バンコクの空港に到着した貨物機から大量の武器が押収された。武器の運び先やその背景には謎が多い。
折りしも、12月上旬に米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が訪朝し、オバマ政権発足後、初めての本格的な米朝対話が行われた直後のタイミングだった。北朝鮮側には強硬一辺倒だったこれまでの態度を緩める兆しが見えていただけに、対話ムードに水を差すような今回の事件には憶測が乱れ飛んでいる。
複雑な経由地、運航主も転々
この貨物機はロシア製のイリューシン76。12月12日に平壌からバンコクのドンムアン空港に給油のために着陸した際、タイ当局が大量の武器を発見、カザフスタン人やべラルーシ人の乗員5人を拘束した。
積荷は北朝鮮製とみられる携行型ロケット砲や地対空ミサイルの部品など計約35トン、16億円相当。国連安保理は、北朝鮮を資金面から圧迫するため、6月に武器輸出を全面禁止する制裁決議を採択。今回の、北朝鮮の動きはこの決議に違反しており、改めて北朝鮮による国際社会への「挑戦」が明るみに出た格好だ。
「偽装」も念入りだった。フライト計画を調査した専門家によると、同機はアゼルバイジャン、アラブ首長国連邦(UAE)などを経由して平壌入りした後、タイ、スリランカ、UAE、ウクライナを経て、イランのテヘランに向かう予定だったという。そこで積荷の武器を引き渡す計画だったとみられる。
貨物機はグルジアの会社に登記されているが、それをニュージーランドの会社がリースし、さらに今回のフライト直前に香港の会社が同機の賃貸契約を結んでいる。
複雑なフライト計画は本来の目的地をカムフラージュするためだろう。積荷は石油掘削のための機械と偽装されていた。運航主が転々としていることも、本来の依頼主を隠す目的であることは明らか。