世界経済が深刻な信用危機に見舞われているが、時間軸を伸ばして俯瞰して見ると、世界が大きな転換期に差しかかっていることが分かる。
20年前に冷戦が終結したのを受けて、旧社会主義国の多くは統制経済を廃止し、自由市場経済への移行を図った。中国は社会主義の看板こそ取り下げていないが、経済の運営はすでに市場経済に移行している。
それに対して、先進国を中心とする資本主義国家のほとんどは人口減少、高齢化や製造業の衰退などによって経済が構造的に低迷期に突入している。日本はその典型例であろう。経済学者は景気を刺激するケインズ政策を提案し、実施してきたが、景気は一向によくならない。その結果、世界経済の成長センターは先進国から新興国にシフトしている。
今回の信用危機はアメリカのサブプライムローン問題が発端だったが、ユーロ圏にも広がりを見せている。世界機関や各国の中央銀行は危機の手当てを試みているが、有効策は見出せていない。日本では東日本大震災と原発事故がサプライチェーンを寸断し、世界経済にさらなるダメージを与えた。気がつけば、世界経済の中国頼みは否応なしに強まっている。
中国は本当に世界を救えるのか
世界地図を広げてみると、唯一、成長を続けている国は中国である。その結果、中国の指導者は海外訪問するたびに、行く先々で経済支援を求められている。大連で開かれた夏のダボス会議では、ヨーロッパ諸国は中国に経済支援への期待を強めていた。だが、中国は本当に世界を救えるのだろうか。
この問いに答える前に、なぜ世界経済がここまで傷ついてしまったのかについて指摘しておきたい。世界経済の回復は、中国も含めた国際協調が必要だが、まずはそれぞれの国が努力することが先決である。中国だけでは世界を救うことはできない。
今回の金融危機は欧米諸国を中心に、これまでの20年間、過剰な投資と消費を続けてきた結果だと言える。経済成長は投資と消費によって牽引されてきたが、貯蓄率はマイナスのままだった。