(植松電機の前編はこちら)
植松努氏は、ロケット開発が生み出したフォロワーシップの考えを確固たる経営哲学ととらえているようです。優しい気持ちがお互いの技術をカバーし合う。そうしながら技術をみんなで共有したり、伝承する。それが企業の財産となっていくと考えるからです。
稼働率は30%が理想的
さらにユニークなのは、稼働率は30%が理想的と考えていることです。これは、自主的に仕事に取り組む人が植松電機の社員であってほしいという思いからの考えです。
「1日の予定がすべて上から決められていないから、自分で自分の仕事をつくり出すことを考えます。言われたことには真面目に取り組んでも、自分で考えて行動できない人はボーっとする時間ばかりが多くなり成長が止まります。稼働率を下げるということは、スキルアップにつながるのです。だからウチの子たちは本業を効率良く行い、ロケット開発の時間を捻出しているんです」(努氏)
自分で考えて行動できない人材が近年急速に増加していることに、日本の未来に懸念を持つ努氏。自分で考えて行動できない人に共通しているのが「趣味がないこと」とも指摘しています。
趣味によって楽しみながら試行錯誤することで、工夫をしたり考えたりする力を身につけられるものとの持論があるため、社員には趣味を伸ばすようにとも説いているとのことです。
ただ、注意しているのが、特定分野の突出したプロフェッショナルをつくらないということです。特定分野のプロをつくるとそこにこだわり続けて、その人の成長は止まるとの考えから専門フィールドを限定しないようにしているそうです。
専門にこだわらず領域を広げよ
そこで培った技術は次の人に伝えて、自分は新たなことを始める。そうやって自分のフィールドを拡げることでスキルも広がる。特定分野にこだわることよりもむしろ、専門以外の領域のことでもプロとして最低限の成果を上げられることに注力しているそうです。
同社ではこうした考え方を、「Every marine is a rifleman(すべての海兵隊員はライフル銃の名手でなければならない)」という米海兵隊の言葉で共有しているそうです。艦船のコックさんが何らかの事情で亡くなっても誰かが料理を作らなければなりません。だから艦長から新兵まで一兵卒として何でもできないといけないのです。