米国の歳末商戦は感謝祭(サンクス・ギビング・デー)の休日明けに本格化する。感謝祭は11月第4木曜日に定められており、今年は26日。したがって翌27日から全米各地で大規模なセールが始まる。郊外の大型ショッピングモールは午前0時に開店して終夜営業というケースも珍しくない。押し寄せる買い物客は、ホリデーシーズンの到来を告げる風物詩だ。
感謝祭は家族・親族が集まり、七面鳥の丸焼きを囲むのが定番だ。お腹が膨れた後はぐっすり眠って早朝から車でショッピングに繰り出すわけだが、お目当ての商品がある店が未明の開店なら、深夜に行動開始。店舗前に広がる真っ暗な駐車場に行列ができるのもおなじみの光景だ。
小売店側も消費者の購買意欲を刺激するため、赤字覚悟の目玉商品を用意し、チラシやテレビ、インターネットを通じて宣伝を繰り返す。数量限定の商品には整理券が配布されるケースもあるが、早い者勝ちが大半で、商品の奪い合いが起きるのは毎度のこと。
41年ぶりのマイナスとなった08年歳末商戦
2008年は米国史上初めてとされる悲劇が起きた。セール初日の11月29日、ニューヨーク近郊のウォルマート・ストアーズで、早朝5時の開店と同時に数百人の買い物客がなだれ込み、男性従業員を踏み倒した。従業員は圧死。店側は緊急閉店の措置を取ったが、集まった客からは不満のブーイングが上がったというから、もはや正気の沙汰ではない。
9月に起きた「リーマン・ショック」で金融市場は混乱状態を引きずり、株価急落で個人資産は目減りし続けていた。また、景気後退局面に入ってから1年が過ぎたタイミングでもあり、先の見えぬ不況風に吹かれて庶民の財布のひもは極端に固くなっていたのだ。格安商品をなんとか手に入れたいという群衆心理が働いたのも無理はない。売り上げ減を恐れ、安売りを連呼した小売店側にも混乱を煽った責任がある。