「本流トヨタ方式」の土台にある哲学について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。

 ここ何回かは、「(その4)現地現物」に関しての話です。現地では「何を見て」「何を読み取るか」が極めて大事な問題であるということをいろいろな角度から説明しています。今回は少し抽象的な内容になりますが、「現地現物」を科学の目でおさらいしてみようと思います。

本流トヨタ方式の現場で「なぜ」を繰り返す理由

 物事をよく見て調べることを意味する言葉に「観察」と「洞察」の2つがあります。

 小学生の夏休みの宿題に昆虫や草花の観察があるなど、「観察」という言葉は身近にあります。しかし、「洞察」は聞き慣れない言葉に感じるかもしれません。手元にある「大辞林」で引いてみると次のようになっています。

【観察】:物事の様相をありのままに詳しく見極め、そこにある様々な事情を知ること。

【洞察】:(1)鋭い観察力で物事を見通すこと。見抜くこと。(2)新しい事態に直面した時過去の経験によるのではなく、課題と関連させて全体の状況を把握し直すことにより突然課題を解決すること。 

 このことから「現地現物」で求められているのは「観察」ではなく「洞察」だということが分かると思います。

 現実に職場で、ある問題に直面した時、その問題の原因や解決法は図書館に行っても見つけられませんし、職場の先輩に聞いても、似た事例はあっても現場の状況は違うのが普通です。

 つまり、その問題の原因を探り解決法を見つけていく手がかりは、誰が担当しようと、その現場の中にしかないのです。このことを「本流トヨタ方式」では、現地に行って現物をよく観察し、現物に向かって「何故」「なぜ」「ナゼ」と繰り返し問え、と教えているのです。