ソ連時代、書籍発行部数から言えば、ロシア人は「世界で一番、本を読む国民」だった。しかし、最近のデータによれば、ロシア人はどうやら「本を読まない国民」になっているらしい。
1996年に行われた世論調査では、「一切本を読まない」と答えたロシア人の割合は20%だった。しかし、今年の夏に行われた世論調査では、35%もいた。
「たまに読んでいる」と答えた人は42%、「ほとんど毎日読んでいる」と答えた人は1996年の30%から22%まで下がった。
ロシアで有名なある物理学者は、「我々は新生ロシアができてからこの18年間で、『愚か者の国』をつくり上げることに成功した」と憤慨する。
「チェホフ、ツルゲーネフやジュール・ベルヌの本を読まなかった世代は、残酷でシニカルな人間になるに違いない・・・もし今のペースで読書離れが進めば、近いうちに本を読む人がいなくなる。そんなロシアには将来はない」と断言している。
ロシアの年齢生理学研究所の専門家は、教育機関と家族の責任が重いと強調している。同研究所の調査によれば、未就学の幼児に本を読んであげる親は10%しかない。小学生の子供に本を読んであげる親は0.2%だけだ。「自分で読める本があるのだから、読んであげなくてもいい」と判断しているようであるが、これは間違いである。「本を読む」ならわしを育成するのは親の任務である、と結論を出している。
ロシアの書店で進む「民主主義」
ただし、「本を読まない」国民が増えているのは、ロシアだけの問題ではない。いわばデジタル時代の人類にとって普遍的な問題と言えるかもしれない。
ロシアの状態について、そんなに悲観すべきではない、という声もある。
いつもはロシアに対して辛辣なポーランド人の1人は、逆に「今のモスクワは愛書家にとって天国だ」と感嘆している。モスクワには本のスーパーが3軒ある。元KGBの本部の反対側には「地球儀」という名前の書店があって、4万点の本を取り扱っている。日本の巨大書店に比べるとかなわない数字だが、ポーランドよりは充実しているという。