パソコン1台あればどこでも仕事ができる時代だ。
都市部では街中でも無線LAN環境が整っていて、いつでも「つながる」ことができる。SaaS(Software as a Service)やクラウドコンピューティングなどのネットワーク型サービスを活用すれば、カフェや地下鉄のホームもたちどころにオフィス空間となり、ブログやSNS (Social Networking Service)を通じて見ず知らずの人と時間と空間を超えたコラボレーションもできる。
オフラインでもつながるための新しい「場所貸し」
しかし、たとえネットで「つながって」いても、1人で仕事をするのは寂しいものだ。疎外感もあるし、刺激も無い。人間は、オンラインだけではなく、オフラインでも「つながって」いたい動物なのだ。
そうしたニーズを満たすために、米国の西海岸を中心に究極のネットワーク組織の萌芽と言える「Co-working」という取り組みが広がっている。
個人クリエイターやウェブ技術者など、自宅やカフェで仕事をしている人を対象に、デスクやインターネット接続、共用の会議室など完備した自由な雰囲気を持つ「仕事場」を貸し出すビジネスだ。
これまでも、スタートアップ企業向けのインキュベーターやレンタルオフィスのような「場所貸し」はあったが、Co-working は、法人ではなく個人利用を前提としているのが最大の特徴。そして、その名前の通り、利用者が「協働」「コラボレーション」することを意識している。
自発的に、柔軟性のある活動ができるよう、スペースは仕切りなく、フラット。専門性を持つ人材が1カ所に集まることで、刺激を与え合ったり、協力したりできる場となる。そこで生まれた関係から、新しいビジネスや、会社設立にまで発展することもあるという。
サンフランシスコ発、世界主要都市で増殖中
Co-workingは2006年頃にサンフランシスコで誕生した。当初は2~3カ所しかなかったが、2007年には十数カ所となり、2008年には50カ所近くにまで増加している。米国以外でも、パリ、ロンドン、ブリュッセル、北京など世界の主要都市で増殖中だ。
各施設に「Co-working=協働」の概念は共通しているが、どのような空間を作るのかについては、それぞれが利用者のニーズに合わせて、独自のあり方を模索している。