米大統領選は民主党のバラク・オバマ上院議員が共和党のジョン・マケイン上院議員を破り、当選を決めた。有権者の大多数は「変革」を掲げたオバマを支持し、共和党政権の「継続」に反対した。日本の場合はどうか。有権者が変革を求め、自民・公明連立政権の継続に反対すれば、日本でも政権交代は実現する。このため、小沢民主党はオバマ勝利の日本への波及を期待するが、当面の衆院解散見送りで、総選挙は来年以降にずれ込み。「オバマ効果」はそれほど当てにできず、日本の変革もまだ程遠い状況だ。(敬称略)

<08米大統領選挙>オバマ氏勝利演説、「変革の時が来た」

<08米大統領選挙>オバマ氏勝利演説、「変革の時が来た」〔AFPBB News

 「同じ名前の民主党として祝意を申し上げたい」――。民主党の鳩山由紀夫幹事長は11月5日午後、オバマが当選確実となったことを受け、党の「次の内閣」の会合あいさつで、こう切り出した。「人種偏見を乗り越えて新しい初の黒人大統領を選出した。素晴らしい2大政党政治、民主政治が米国には生きていると、日本の国民も認識したと思う。この民主主義を日本においても実現し、政権交代を果たさなければならない」

 だが、米国で政権交代が決まったからといって、直ちに日本にも波及すると見るのは早計だ。

 麻生太郎首相は10月30日の記者会見で、「政局よりは政策」と景気対策を優先し、当面の衆院解散を見送る意向を表明した。オバマ勝利を弾みに11月中の衆院選に臨みたかった民主党だが、来年以降のずれ込みは確実な情勢だ。もっとも、年末解散の可能性は取りざたされており、民主党の小沢一郎代表は来年1月の通常国会冒頭までに解散があり得ると見て、準備を怠らないよう党内に注意を促している。

クレディビリティーなき党首

 米大統領選直前、永田町で持ちきりとなった話題は11月4日付読売新聞の世論調査だった。それによると、内閣支持率は40.5%(前月比5.4ポイント減)、不支持率は41.9%(同3.3ポイント増)。内閣発足から1カ月余で、不支持率が支持率を上回る「逆転」、という衝撃的な数字だった。

 一方、同じ調査によると、麻生と小沢のどちらが首相にふさわしいかという問いでは、麻生50%に対し、小沢22%。依然として小沢の不人気ぶりは際立っている。

 なぜ小沢はこうも人気がないのか。例えば、オバマと小沢を比較した場合、決定的な違いは何か。1つ挙げるとすれば、それは政治家、指導者としてのクレディビリティー(信頼性)だろう。小沢にはそれが足りない。つまり、有権者の多くは小沢に信頼感を持っていないのだ。自民党に愛想をつかして民主党支持に転じたものの、小沢は好きになれないのである。

 次期米大統領に決まったオバマには、支持者から絶大なる信頼が寄せられたと言っていい。これに対し、「独断専行」「唯我独尊」「秘密主義」といった小沢のイメージは根強く、有権者のアレルギーはなかなか消えないようだ。

 次期衆院選をにらみ、小沢は地方行脚を続け、質疑応答の形式で自己アピールする対談本を出版し、最近はインターネットの動画サイトにも相次いで出演するなど、自らのイメージアップに懸命だ。小沢が自らのクレディビリティーを少しでも高めることができれば、次期衆院選での民主党単独過半数も夢ではない。