(今回は中国のトイレの話です。食事前、食事中の方はご注意ください)

 公衆トイレはその国の文化を測るバロメーターである。貧しい国のトイレで清潔なものを探すのは難しいものである。

 以前、中国のトイレは強烈な異臭を放つ、とても清潔とは言えないもので、私は中国で排泄の意を感じると決死の覚悟をもって用を足しに行ったものだが、現在、中国の公衆トイレは拍子抜けするくらいに変わってしまった。

 北京、上海、深センの都会はもちろん、桂林や重慶、大連や西安のトイレですら清潔で臭わない。中国の名所であったあの懐かしいトイレは「文明開化」とともに消滅してしまったのだろうか。

ジョンと名乗る旅行代理店の主人

 中国の北西の果て。天山山脈の麓に位置し、世界で最も内陸にある街、カシュガル。新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠西端にあり、東西交易の起点である。

中国的でない街、カシュガル。ウイグル人が多い

 ここには多くの旅行者が滞在し、西側の中央アジアやヨーロッパへと向かう者、欧州から中央アジアを通って東側の中国に入る者が行き交う。カシュガルは太古の昔から交通の要所として栄えてきた。

 色満路という通りにある、以前、ロシア領事館だった色満ホテルの107号室にチェックインを済ますと、カシュガルからチベットまで車で行くルートの情報収集をすることにした。この町にはいくつかの旅行代理店があるが、新型インフルエンザと暴動の影響からか、どこも閑古鳥が鳴いている。

 ホテルの敷地内にジョンズカフェという秘境の旅行手配では名の知れた旅行代理店があり、カフェという名の通り、軽い食事も提供している。

 「ジョンさんはいますか?」と聞くと、中年の白人女性と打ち合わせをしていたランニングシャツを着た広い額の男が「私ですが」と反応した。ジョンは白人ではなく、中年の中国人だった。

 英語を話す中国人の多くは、欧米風のニックネームを持っている。生粋のアジア人がラテンやアングロサクソン系の白人名を臆面もなく名乗っていると、時折り私は趣味の悪い冗談でも聞いているような違和感を覚える。