イラン核開発も「利用」

IAEA理事会開幕、イランやシリアの核問題が焦点

IAEAのエルバラダイ事務局長(資料写真)〔AFPBB News〕

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 サミット2日目、米東部時間9月25日未明。「イランが同国2カ所目となるウラン濃縮施設を建設中であると国際原子力機関(IAEA)に届け出た」との報道が伝わった。

 その直後、オバマ大統領は緊急記者会見を開き、全米生中継のテレビカメラの放列に向かい、「国際社会の安定と安全を脅かしている」とイランを強く非難した。

 世界中の視線を集める晴れの舞台で、オバマ路線をアピールすることも忘れなかった、両脇にブラウン英首相とサルコジ仏大統領を従え、発言機会を分け合うことで、ブッシュ前政権時代の「米国至上主義」とは一線を画したのだ。

 布石は十分過ぎるぐらい打ってあった。イランがIAEAに届け出たのは4日前の21日。その翌日には、IAEAのエルバラダイ事務局長が米政府に対してイランの届け出内容を通告している。

 さらに23日に掛けて、ニューヨークでの米中・米ロの各首脳会談の場を利用し、米国は他の安全保障理事会常任理事国との対イラン包囲網を築き上げていた。

 この出来事が好例だが、今回の「金融サミット」は最初から金融の枠組みを超えていた。イラン問題ひとつとっても、必要なのは主要8カ国(G8)ではくくれない国際協調。先進国と新興市場国が手を携える政治ショーの下地は、米国の巧みな手綱さばきできっちり整えられていた。

「世界の中心」に鳩山首相はいなかった

 米英仏首脳そろい踏みのヘビー級会見から約8時間後、「金融サミット」は、世界経済の不均衡是正を目標に掲げる首脳声明を採択して閉幕した。

 米国に過剰消費と財政赤字の是正を求める一方、日本や中国などの貿易黒字国には内需拡大が課せられた。外需依存国に米国のマネーが流出して度を超えたリスク投資の温床となり、金融危機につながったとの反省があると解説されている。

米英仏3か国首脳、イランに秘密核施設の立ち入り要求

サルコジ仏大統領(中央)とブラウン英首相(右)を従え、世界中の視線を集めた〔AFPBB News

 しかし、世界経済の構造転換は容易には進まない。むしろ、雇用減少と消費低迷にもがく米国が、現状を奇貨として開き直り、経済成長の責任を他国にも負わせる意図の方が明確だ。その牽制球が最も速いスピードで放たれた先は中国。G8首脳会議をG20へと拡大・昇華させ、参加国の相互監視体制を強化するのが真の狙いに思える。

 実際、サミット中に記念撮影に臨んだ首脳の立ち位置が象徴的だった。議長国のオバマ大統領を中心に、向かって右隣には中国の胡錦濤国家主席が並んだ。その2人を上段からブラウン英首相、メルケル独首相が見守る。インドのシン首相も同格のポジションを得た。